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長野・善光寺で期待のベンチャー輝く 農業版カーナビが連覇

Startup Japan Tour 2015 in 長野

 2015年8月の京都開催から、半年をかけて福岡、岐阜、宮城、愛媛、北海道と全国7会場を回ってきた“Startup Japan Tour 2015”もいよいよファイナル。2016年4月9日に“Startup Japan Tour 2015 in 長野”が開催された。東京で起こるスタートアップと大手企業とのオープンイノベーションの流れを、地方でも活性化させるため、地方経済を盛り上げるための情報を共有することを目的としたイベントだ。

 ファイナルらしく会場になったのは、なんと国宝でもある善光寺内の“善光寺大勧進”。数々の重要文化財も収められている堂内の中、厳かな雰囲気でスタートアップのイベントが始まった。ピッチに登壇したスタートアップ企業含め登壇者の面々には、商売繁昌を筆頭にご利益がありそうだ。

 さくらインターネットによる『さくらのIoT』解説セッション、長野や山梨など甲信越地方の課題を共有するセッションに加えて、地場のスタートアップと北海道会場でグランプリに輝いた農業情報設計社をゲストに加えて、7社によるスタートアップピッチが行なわれた。

農業版カーナビが圧巻のピッチ連続優勝

 グランプリに輝いたのは北海道から来た、農業情報設計社の農業版カーナビアプリ『AgriBus-NAVI』だ。4月7日開催の新経済サミット2016のプレゼンイベント“NEST STARTUP CHALLENGE PRESENTATION”でも1位に輝き、いま急成長が期待できるベンチャーのひとつといっても良いだろう。

『AgriBus-NAVI』は、トラクターで撒く農薬の無駄を少なくする、農業機械をまっすぐ等間隔に走らせるためのGPSガイダンスアプリ。今まで50万円から数百万円とかかっていたシステムを、無料で提供している。

 審査員を務めたさくらインターネットの小笠原治フェローも、「さっさと大きなお金を集めて、世界一のまま突き抜けてください」と総評で期待を込める。『AgriBus-NAVI』は2015年初頭のリリースから、1年でダウンロード数は2万7000を超え、ライバルを抑えて世界シェア1位を獲得している。ブラジル、スペイン、アメリカと、ダウンロードの9割は国外が占める。

 農業情報設計社の濱田安之代表は「ポケットに入るこの新しい技術が世界中の農業機械と農業を変えていく」と、今後の展開に自信を見せる。濱田氏はもともと農林水産省で自動操縦やロボットなどを研究しており、その応用で生まれたアプリ。IoTのオプション、自動操縦オプションを近日中に提供予定で、高いシェアからさまざまなビジネスにつなげていける点も評価されていた。

田んぼの水量調節をスマホで管理

 京都リサーチパーク賞に選ばれたのは、ともに農業系IoTベンチャーである『AgriBus-NAVI』の農業情報設計社と、『Paditch(パディッチ)』の笑農和の2社だ。

 『Paditch(パディッチ)』は水田の水量管理をスマートフォンから遠隔で行なえるようにするハードウェア。水田の水量は数百年の間、木の板の開け閉めで行なわれている。冷たい水を水田に流すために、早朝に数時間かけて田んぼを回り、ひとつひとつ開けていく。近年、農家が減ったために一農家の作農面積は上がり、朝だけで往復6時間かけてすべての水田の木の板を開けるという作業をするケースもあり、高齢の農業従事者の場合かなりの負担になっているという……。

 その木の板をデバイスにするだけで、家からでも遠隔で操作ができるようになり、大幅に作業を効率化できるようになる。モグラが穴を空けてしまったら、アラートがなると言った仕組みもある。下村豪徳代表は将来的には操作をスマホだけではなく、高齢者にも親しみのあるテレビにインターネットをつないで、自分のもつ田んぼを一括管理できるようにする。“じぶんちの農家チャンネル”をつくってしまおうと考案している。

モノづくり版弁護士ドットコム

 新日本監査法人賞には産業革新研究所の『ものづくり.com』が選出。モノづくりのプロセスを共有して、解決策を提示して支援する、モノづくりのためのポータルサイトだ。

 技法の解説から活用情報、専門家の意見まで、モノづくりに関わるあらゆる情報が集約されている。製造業の事業所数は年々減少しているが、モノづくりのニーズは上がってきており、コストはかかるものの、まだまだ伸びしろはあると代表のJohn HartCTO。サービスを弁護士ドットコムのモノづくりバージョンとたとえ、情報の集約を図る。

 同様のサイトに“Linkers(リンカーズ)”があるが、大企業の開発ニーズは続々と出てきているものの対応できるモノづくり企業は少なく、中堅どころがモノづくりにアプローチできる仕組みが多く出てきてほしいというのが選出理由だ。

料理で企業研修

 受賞にはならなかったが、気になったサービスがコークッキングの『クリエイティブ・クッキング研修』だ。料理をコミュニケーションと課題解決のためのツールとし、企業の課題を料理で解決するためのワークショップとクッキングを合わせたソリューションを提供している。

 研修の目的は企業の色、らしさといった暗黙知を言語化し、それを料理として表現することで、チームのコミュニケーションの促進や、企業らしさを知って、チームの強化を図ることが目的。現在、増えているキッチン付きレンタルスペースなどを活用する。

 コークッキングの川越一磨代表は、研修だけではスケールしていかないので、料理でいろいろな主会問題を解決していきたいとしている。

●ピッチ登壇企業
AMP 五井隆浩代表取締役
『melocy(メロシー)』 ignote 中西孝之氏
『猫の生活用品の開発・製造』 猫 小林一樹氏
『ものづくり.com』 産業革新研究所 John HartCTO
『クリエイティブ・クッキング研修』 コークッキング 川越一磨氏
『Paditch(パディッチ)』笑農和 下村豪徳氏
『AgriBus-NAVI』 農業情報設計社 濱田安之氏

■関連サイト
Startup Japan Tour 2015

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