腕時計・宝飾品の展示会「バーゼルワールド2016」が、現地時間3月16日からスイス・バーゼルで開催中。ン百万円、ン千万円のスーパーブランドに並び、屈強すぎる腕時計「G-SHOCK」のカシオ計算機も新製品を出していた。
スチームパンクな「MT-G」
まずはG-SHOCK高級ラインが大変そそる。
最上位シリーズ「MR-G」は今年で発売20周年。アニバーサリーモデル「MRG-G1000HT」は、雪平鍋のような槌起(ついき)加工を施した。単純に言えばキレイなベゼルをガンガンぶっ叩いてデコボコをつけた、スイス人が製作工程を見たら気絶しそうな1本だ。お値段70万円、限定300本生産。
色味はとても日本的。ベゼルとストラップは刀装具や装身具に使われるおぼろ銀色、ビスやボタンは甲冑などに使われる銅(あがかね)色。ベースはMRG-G1000、ケース・ストラップはチタン。GPS電波受信、2都市時刻同時表示可。
もう1つは「MT-G」シリーズから「MTG-G1000AR」。とってもスチームパンクな見た目がたまらない。ローズゴールドIP処理にブラックIP処理を重ねた上、ブラックIPをひっぺがすことで枯れた銅色を出した。お値段21万5000円、7月発売予定。安く感じるのは何かがマヒしているためか。
針、ダイヤル蓄光、10時位置のインダイアルもローズゴールドに統一した。ベースはMTG-G1000D。ケース・ストラップはステンレススチール。GPS電波受信、2都市時刻同時表示可。20気圧防水。
「OCEANUS」スペシャルバージョン「OCW-G1100S」は、地球と宇宙の間にある外気圏を表現したセラミックベゼルが美しい。お値段は42万円、200本限定。2時側のインジケーターには再結晶ブルーサファイアと天然ダイヤモンド。6時側のインダイアルにはデュアルコイルモーターを搭載、ワールドタイムの設定時にすばやく動く。ベースはOCW-G1100。ケース・ストラップはチタン。
おなじく「OCW-G1100C」は、成層圏から見た地球をあらわした。白は雲、青は空だ。2時側のインジケーターでは白蝶貝を使って雲海を表現しており、かわいい。ベースはOCW-G1100Sと同じ。発売予定時期、価格ともに未定。
地球がついた新「EDIFICE」
普段使いには、新しいEDIFICE「EQB-600D」が登場した。5月発売予定だ。価格未定。カッコいい。
EDIFICEはわたしも使っている普段使いの腕時計。スマホとのBluetooth接続によってワールドタイム機能を持たせ、正確性と低価格を両立させたカシオらしい時計だ。文字盤がシンプルなのが好き。とても重いが修業だと思えば問題ない。
新モデルは文字盤に24時間計「3Dグローブダイヤル」をあしらった。時針の動きに合わせて地球型のディスクが“自転”して昼夜をあらわし、かわいい。EDIFICEの価格帯でこういうギミックが入っているのはうれしい。
スマホ時刻合わせも強化。今までは各国通信キャリアによって取得する時刻がばらばらだったが、アプリから独自の時刻データベースに接続して時刻を取得、GPSの位置情報と照合し、正確な時間を反映するように改善した。
水深センサー搭載「FROGMAN」「GULFMASTER」
ファン待望のダイバーズウォッチ「G-SHOCK FROGMAN GWF-D1000」も登場した。熱い。今までも色替えはしてきたが完全な新作は7年ぶりだ。12万5000円、6月10日発売予定。
気圧、温度、方位センサーに加え水深計を初搭載。水深80メートル対応、計測単位は10cmまで。防水性能は潜水用で200メートル、浮上速度警告機能など日常生活では絶対に使わない機能も備えた。潜水時間、最大水深、最低水温などを記録するログ機能もある。
ケースは樹脂製、ストラップはカーボンファイバーインサート。風防はサファイアガラス。ダイバーズの中でも海難救助をイメージしており、裏ぶたにはカエルちゃん(FROGMAN)がボンベを背負ってライトを持った姿が描かれていて愛らしい。ケースが厚く、ジャケットやシャツの裾にほぼ100%引っかかるが、タンクトップ1枚になれば問題ないだろう。
海系では船乗り向けの「GULFMASTER GWN-Q1000」も新登場。発売時期、価格未定。これも水深センサーを搭載し50メートルまで対応する。防水性能はやっぱり200メートル。5時位置にレトログラードというインダイアルがつき、潮の満ち引き、気圧変化などを示すようになった。レトログラードにはデュアルコイルモーターを使用、すばやく動作する。ケースはカーボンファイバー。
新「PROTREK PRW-7000」も登場。加速度センサーを備え、方位計の自動水平補正ができるようになった。8万2000円、7月発売予定。これも5時位置にレトログラードを備え、目的地の方向を示すベアリングモーター機能が使える。釣り用のフィッシングタイム機能もついた。20気圧防水で、水辺でも使える。
女子向けには波のようなラインがきれいなBABY-G「BGA-220」、スマホ連携機能がついた「SHEEN」などが登場。BABY-Gは本当にかわいい。白系のトップス、金系のアクセサリーに合わせると、大人っぽく使えるのでは。
カシオは日本のロレックス?
今回カシオが出展したのはバーゼルのホール1.1、1.2という2つのエリア。ラグジュアリーブランドが軒を連ねるホールの2階と3階にそれぞれブースを出した。
とくに1.1は、デジタル時計の数字と浮き沈みする照明を使った、宮島達男さんのようなインスタレーション。カシオが今後テクノロジーブランドいうイメージを世界に広めていきたいという意思をこめているように思えた。
スイス時計は伝統・普遍。カシオは進化・革新。方向性は真逆だが、どちらもブランドのファクターという点で共通している。
カシオが高級ブランドというと不思議な気分だけど、高級時計の代名詞ロレックスも「頑丈・防水」でヒットしたブランド。カシオが日本のロレックスやオメガになってもおかしくない。いつかOCEANUSが数百万円で売買されたり、ジェームズ・ボンドが爆弾になったG-SHOCKを投げる日が来るのかもしれない。
とはいえブースで製品群を見るとバーゼルの中では圧倒的に異端だ。FROGMANなんかが象徴的だが、繊細な機能を内に秘めながら、外装は無骨で、意味不明なほど屈強。これがカシオなんじゃないかと思いもする。さっきはジェームズ・ボンドと言ったが、どちらかといえばジェイソン・ボーンだ。ラグジュアリーブランドではなくマッチョブランドとして、つねに異端でありつづけてほしい。
盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、記者自由型。好きなものは新しいもの、美しい人。腕時計「Knot」ヒットの火つけ役。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中。
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