「嘘偽りのない音楽」つくりたい
── 勝手な見方だとは承知していますが、学生時代はGLAY=リア充のように思っていたので、HISASHIさんがオタクと知ったときは驚きました。
いや、ギタリストはオタクしかいないっすよ。
── 本当ですか。
ギター飲み会をやるんですけど、SUGIZOさんとか、同世代ならSIAM SHADEのDAITAくんとか、みんなオタクですからね。DAITAくんなんてギターの話よりアニメの話してる時間のほうが長いですから。
── ただのオフ会じゃないですか。
まあ機材好きってところもあるんですけどね。でもミュージシャンって、けっこう(オタクが)多いんじゃないですかねー。こだわりがあるっていうか。だからアニメの話とか、ガジェットの話とかもしていて。
── ボカロPがツイッターでしゃべっている感じとまったく同じですね。
それこそボカロPのギタリストの友だちが来たときは「生配信ってどうやんの?」「あー、やっぱMac弱いよねえ」みたいな話もしてます。
── 今までミュージシャンがメディアでそういう話をする機会は少なかった気がします。いつのまにかわたしの中で、勝手なミュージシャン像がつくられたんですね。雲の上の存在というか……。
本当は「最近あの漫画が面白くてさ~」とか、そんな話ばっかなんですけどね。
── なんだか、ものすごく親近感がわきました。
ギタリストに限定されると思いますけど、大体みんな家にいますしね。すごく非リアな感じですよ。宅録好きも多いし、スポーツやってる印象もない。
── 「音楽クラスタ」のオタクみたいな……。
そうですねー。みんな基本的に「にわか」ではないし、メタルならメタルで究極のメタルを極めるというのはあります。ヴィジュアル系が好きだったら徹底的に追及する。パンクでもノイズに近いものを入れていくと。
── その意味でいうと、HISASHIさんはいまメディアの手を借りず、インターネットでありのままの姿を見せているような感じなんですかね。
ある時期から、活動の場所をインターネットに移そうと思ったんですよ。それこそボカロPとかもそうだけど、すごく自由に自分の才能を披露できる場所ができて、そこに自分もあるんじゃないかとようやく気づいたというか。むしろ昔からそこにいたんじゃないかと。それくらい、すごく居心地がいいなーと。
── 「GLAYほど大きなバンドになると、インターネットで勝手にやったらいろんなところから怒られそうだなあ」と邪推してしまうところもありました。
大きな会社だったら「事務所が管理してるものだから」ということになると思います。でも今は自分たちでやっているラバーソウルって会社がある。むしろメンバーがいちばん情報は早いし、コントロールの仕方もわかっている。ここまで大きくなったバンドって「指図」が難しいんですよね。
── 何かしようとしても順序を踏んでしまうというか。
「やってくださいませんか」と言われるのがいやで。本当はもっと厳しく言ってほしいんですよ、「あそこのピッチ甘いよ」とか。でも言われない。だから自分たちでがんばるしかない。自分たちで演奏しているビデオをチェックして俯瞰から見たり、「もうちょっとこういう要素を増やしたほうがいい」と話し合ったり。そこはリスナーレベルでGLAYの4人が持っている力だと思うんですよね。
── 大変そうですけど、楽しそうでもありますね。
楽しいですよ。誰もやってないようなことができる。チャンスがたくさん転がっている。やるのも自分たちだし、失敗するのも自分たち。取り返すのも自分たち。すごくインターネット的なムードで出来ますから。
── 今回の『G4・IV』は週間チャート1位を獲得しました。これはもしかしたら「インターネット的なムード」が実を結んだ証拠なのかもしれないと感じます。
まだどういうものが受け入れられて、流行るのかはわからないですけどね。好きな音楽を全力でやるっていう、すごく簡単であいまいなことだけど、それが一番かなと思うんです。そのうちきっと売れない時期も来ますよ。でも、そのときも嘘偽りのない音楽をやるってことが、GLAYの正しい音楽かなって思うんです。
HISASHI
1994年のメジャーデビュー以降、CDセールスやライブ動員数など、常に日本の音楽シーンをリードし続け、数々の金字塔を打ち立ててきたロックバンドGLAYのギターリスト。
GLAYで手がけた作品が評判となり、昨今では声優アーティスト、アニソンシンガーへの楽曲提供やプロデュース業、ACE OF SPEADS のリーダーを務めるなど多岐にわたる活動を行う。
GLAYとしては、今年5月に20周年の締めくくりとして10年越しの東京ドーム公演「20th Anniversary Final GLAY in TOKYO DOME 2015 Miracle Music Hunt Forever」を開催し両日で11万人を動員した。
現在、19箇所30公演の 4年振りホールツアー GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016“Supernova”を開催中。
1月27日(水)にはニューシングル『G4・Ⅳ』をリリース。
HISASHI作詞作曲の楽曲「彼女はゾンビ」は従来のGLAYサウンドに新たな息吹をもたらすデジタルロックナンバーでHISASHI独特のコミカルな歌詞のフレーズが散りばめられた痛快な楽曲となった。
また、4月より放送されるTVアニメ「クロムクロ」の主題歌をGLAYが担当し、HISASHI書き下ろし楽曲「デストピア」が決定している。
GLAYオフィシャルサイト
http://www.glay.co.jp/
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盛田 諒(Ryo Morita)
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1983年生まれ、記者自由型。好きなものは新しいもの、美しい人。腕時計「Knot」ヒットの火つけ役。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中。
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