シスコのIoTビジネスが狙うのは製造業/スマートシティ/スポーツ&エンタテインメント
シスコが産業ロボットのファナックと協業、IoTで“停止ゼロ工場”へ
2016年01月22日 06時00分更新
シスコシステムズは1月21日、産業用ロボットの大手メーカーであるファナックとの協業を発表した。協業を通じて、製造業のロボットにおける“ゼロダウンタイム化”を目指す。同日の発表会では、製造業/スマートシティ/スポーツ&エンタテインメントの3領域に注力するシスコのIoTへの取り組みや協業、国内実績なども紹介された。
製造業のロボット稼働率向上=ゼロダウンタイムを目指した協業
シスコとファナックの協業は、製造業の工場で稼働している産業ロボットをネットワーク接続し、遠隔監視や障害予兆診断を可能にすることで、ロボットの稼働率向上を目指すというもの。すでに北米の大手自動車メーカーで12カ月間のパイロットプロジェクトを実施し、生産設備とロボットのダウンタイムを「ほぼ100%削減できた」と発表している。
発表会に出席したファナック 専務取締役 ロボット事業本部長の稲葉清典氏は、同社がこれまでに取り組んできたダウンタイム削減/稼働率向上の取り組みと、シスコとの協業で解決していく課題について説明した。
ファナックでは、かねてから産業用ロボットで、ロボット自らが“見て、感じて、考える”能力を搭載する取り組みを行ってきた。この能力を備えた“知能ロボット”は、作業上のミスを自ら発見して修正(やり直し)をするため、それまで発生していた自動運転中の軽微な作業停止を大幅に減らすことができる。
実際に、知能ロボットの導入で、ダウンタイムは10分の1程度まで減らすことができている。だが同時に、それを完全に「ゼロ」にすることは難しいという。たとえ知能ロボットであっても、ロボット自身の故障を直すことはできないからだ。
この「ロボットの故障によるダウンタイム」をゼロにする(限りなくゼロに近づける)ことが、今回ファナックがシスコとの協業で実現しようとしている課題だ。具体的には、ファナックのロボットをネットワークに接続し、ロボットの稼働状態のデータ(モーターのトルクデータなど)を社内サーバーに集約することで、故障予知や故障診断を行う。ファナックでは、この機能を「ゼロダウンタイム(ZDT)」と呼んでいる。
さらにオプションとして、そのデータをファナックのデータセンターに送信し、遠隔からファナックが監視、予兆診断して、故障が発生する前に交換部品を発送するサービスも提供する。稲葉氏は、こうした積極的な予防保全の取り組みで「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」ロボット運用環境を実現していくことを説明した。将来的には、データ分析に機械学習やディープラーニングのアプローチも取り入れていくという。
こうしたファナックのZDTを支えるのが、シスコのインフラ製品/サービス(UCSサーバー、スイッチ、クラウドサービス)だ。シスコをパートナーに選んだ理由について稲葉氏は、製造業の顧客は工場内のデータを社外に送信することに極めて慎重であるため、絶対的な信頼があり、技術的にもセキュリティが担保できるシスコが適任だったと説明した。
「こうしたサービス〔を提供しているロボットの累計台数〕は、現在3000台、4000台まで来ている。今後、さらに増えていくものと考えている」「当社のロボット出荷台数は月間でおよそ5000台。まずは出荷の半数を占める自動車産業をターゲットとして、月間2500台の採用を目指したい」(稲葉氏)
一方でシスコ側の狙いは、ファナックと共にIoTの取り組みを進めることで、ロボットのみならず工場全体のオートメーションを実現していくことにあるという。シスコ 専務執行役員の鈴木和洋氏は次のように語り、今後も主にITインフラの側面から技術的な協力をしていくとした。
「工場内にはロボット以外にもCNC、PLC、そのほかさまざまな機械があるが、それらの中でシスコのIoT製品がデファクトスタンダードになるような世界を、ファナックと一緒に作っていきたい」(鈴木氏)