このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

『角川インターネット講座』(全15巻)応援企画 第15回

【後編】鹿野司氏、堺三保氏、白土晴一氏「設定考証ブラザーズ」かく語りき

サイバー戦争よりも怖い「敵意を増幅させる装置」としてのインターネット

2016年01月17日 18時00分更新

文● 田口和裕 編集●村山剛史/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

ネット配信全盛時代が来たら、設定考証の仕事も増える!?

 バラン星でしたっけ、SFファンならお馴染みの円形じゃなくて楕円形の星になってたじゃないですか。あれ見ると高速自転してんのかなあとSFファンは思うじゃない。それこそがやっぱり大事なの。

 一方で「インターステラー」って映画では、最初に降りる海の星がブラックホールの側にあって重力の影響で時間が遅いって言ってるのに普通に人が着陸して歩けてたじゃないですか。じつは設定考えたキップ・ソーン(物理学者)の解説書によると、高速回転してるからあの付近は重力が相殺されて低重力だったそうなんです。

 だったらその絵を入れとけよと。それをやってないから、見た瞬間に『えーっ?』って思っちゃう。

白土 でもまあ「そんなの気にしないよ」って現場で弾かれた気はするけどね。

 そうそう、そこが問題だよね。

白土 ええ、僕なんかはいつもそこで戦ってますよ。

 がんばれ!

白土 一緒に戦ってくださいよ!

 お金くれたらいくらでも戦うよ(笑)

鹿野 それは監督さんのセンスですね。設定の立場としてはベストなものを出しますけど、使うかどうかは監督さんの判断だもんね。

白土 そうですね。絵的にどう収まるかの判断で決まっちゃうんで。

 現場にもよるじゃない。一緒に(脚)本読みにも出て考えましょうと言ってくれる現場もあれば、(脚)本だけ渡されてちょっとチェックしてくれよってところもある。

白土 僕は設定で参加するときには、なるべく絵作りに関わる打ちわせまで出るようにしてますよ。

 コンテの段階でチェックさせてもらえると助かるよね。

白土 さっきの話のように、Netflixで全世界同時公開みたいなものが増えることになったら、日本では大丈夫でも別の文化圏では問題になるようなことを指摘する人が必ず必要になってくるわけで、どんどん僕らの仕事は増えるんじゃないですかね。

 ……最近本当にSF設定(の仕事)が来ないんですよ。ほとんどリアル側ですね。こないだまで「ヨルムンガンド」って軍事ものをやっていたら軍事ものばっかりきて、さすがに嫌だなと思って中世ものに移ったらそういうものばっかり。SFもたまには呼んでくださいって思ってますけどね。

 まあ仕事をしてても全然儲かりませんがね(笑)

白土 SFに限らず設定考証でどうこうというのは食えないですね。

鹿野 そういうことに力を入れてくれる監督さんがいて初めて仕事になるから。

 できたらオレは(SF考証のほかに)科学考証としてもう一人立ててほしいと思ってるくらいだけどね。あくまでSFはアイデア屋なので、科学考証の人は別に欲しいよ。

白土 この3人で受けたらいいと思いますよ(笑)

 オレが古今東西のSFのアイデアを並べて、科学考証とその他技術考証や軍事考証をお二人にやってもらうと。いい設定ができるんじゃないですか?

鹿野 設定だけね(笑)

インターネットによって「三人寄れば文殊の知恵」は実現したのか?

 設定考証ブラザーズの三人が寄ってたかって作った設定を活かせば、世界で戦える画期的なアニメシリーズができる……!? 角川インターネット講座 第6巻ではまさにその「集合知」を解説した一冊。インターネットによって、いつでも・どこにいても複数人の知恵をまとめて使えるようになった現在、文化・政治・経済は集合知によってどのような発展を遂げるのか――。興味を持った方は、監修の西垣通氏をはじめ、ドミニク・チェン氏、江渡浩一郎氏らの論考が詰まっている『ユーザーがつくる知のかたち 集合知の深化』をどうぞ。

■Amazon.co.jpで購入

前編はこちら

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン