写真:「角川アスキー総合研究所」発足記念フォーラム
株式会社角川グループホールディングスは17日、新会社として「株式会社角川アスキー総合研究所」を設立すると発表した。代表取締役社長は角川グループホールディングスの会長を務める角川歴彦氏。角川アスキー総合研究所では、ネットワーク・デジタル分野の調査や研究、さらには出版や教育なども進めていく。
角川氏が事業を新たに立ち上げようと思い立ったのはクラウド時代の到来がきっかけだったという。「アスキー創業者の西 和彦さんが『パソコンができたことで何が変わるのか』というところでアスキー総合研究所を始めたのに対し、こちらは『クラウドで社会がどう変わっていくのか』ということ」(角川歴彦氏)
主席研究員にはMITメディアラボの伊藤穰一所長や、一般財団法人Rubyアソシエーションのまつもとゆきひろ理事長、「ニコニコ動画」を運営する株式会社ドワンゴの川上量生会長ら、豪華な面々を揃える。この人選について角川氏は、正直に「自分の好み」と語った。「人生の第四コーナーにかかって、思い残すことなく仕事を終えたいと思ったとき、好きな人たちを呼びたいと考えたんです」(同氏)
株式会社角川アスキー総合研究所 主要メンバー
株式会社角川アスキー総合研究所 代表取締役社長 角川歴彦
主席研究員 伊藤穰一(MITメディアラボ 所長)
主席研究員 川上量生(株式会社ドワンゴ 代表取締役会長)
主席研究員 まつもとゆきひろ(一般財団法人Rubyアソシエーション理事長)
主席研究員 遠藤 諭(株式会社アスキー・メディアワークス)
主席研究員 福田 正(株式会社角川デジックス 代表取締役社長)
※敬称略、順不同
情報は固定化されたものほど価値が生まれる
角川グループでは本事業と同時に、単行本シリーズ「角川EPUB選書」を6月、月刊ビジネス誌「アスキークラウド」を7月(オンライン版は3月)に創刊する予定だ。
角川EPUB選書のタイトルには「HTML5」「Google、Appleに負けない著作権法」などが並ぶ。またアスキークラウドは、「あらゆる企業は、クラウド化しないと生き残れない」といったフレーズのもと、ごく普通のビジネスパーソンが知るべきテクノロジーやクラウドコンピューティングをビジネス目線で取り上げていく。
角川EPUB選書のパンフレットの中で永井草二編集長は、インターネットの情報は、水のように流れている状態では活用できないという。人々はそれをボトルにつめておく必要がある。「情報は固定化されたものほどそこに価値が生まれてきます」(永井草二氏)。角川グループは同じく17日、Twitterと連携した小説事業も発表したばかり。流れ(フロー)をためる(ストック)出版事業に力を入れる。
現在はTwitterやFacebookを中心に情報爆発が起きている時代だ。タイムラインの情報は驚くべきスピードで流れ、1時間も離れると話題についていけなくなることもしばしば。チャップリンが歯車の上で踊るような慌ただしさだ。時間を気にせず、必要な知識を自分のタイミングで手に入れたいと願っている人もいるだろう。
発足記念フォーラムの会場には、AmazonやGoogle、Ustreamといったネット企業の面々も顔をそろえた。出版社やテレビ局といったクラシックなメディア企業は、じりじり続く不況に苦しんできた。どうやってインターネットの企業と一緒に生きていくのか、研究員たちがどんなアイデアを出していくのか、注目が集まる。
