プライベートクラウドでVMware NSXを採用した味の素
「デジタル化時代におけるビジネスの進化に必要な5つの要件」について披露したパット・ゲルシンガーCEOによる講演の後、日本のvForumならではの3社の事例が披露された。3社はともにサーバー仮想化から、ネットワーク仮想化、パブリッククラウド、エンドユーザーコンピューティングなどヴイエムウェアの新しいテクノロジーに挑んだエンタープライズ企業になる。
1社目として登壇したのは味の素 情報企画部 専任部長の山口浩一氏。同社ではパブリッククラウドよりも低廉なプライベートクラウドを構築するとともに、VMware NSXによるネットワーク仮想化を推し進めた。
調味料や冷凍食品などのコンシューマ製品と飼料や化粧品などアミノサイエンスの2つの事業を柱に、世界約130カ国で事業を展開する味の素。IT部門は「マルチナショナル・ワンカンパニー」「ファイン・オペレーション」「バリアフリー・コミュニケーション」を目指し、インフラ部門ではグループでフラットなネットワークの提供を進めているという。「私たちの現地法人は本社のためではなく、現地のお客様のためにオペレーションをしている。よって、本社が価格優位性の高いインフラサービスを提供することが統合化を進めることになると考えている」と山口氏は語る。
同社は2007年からサーバーの仮想化を推進。2014年の第5世代の仮想化基盤では、22台の物理サーバーに700VMまで集約し、大きな効率化を実現してきた。2015年度からはパートナーであるNRIシステムテクノとともに、次世代プライベートクラウドの構築を進め、ホストあたり40VM、データセンター内で1100VMまでのサーバー集約を進める。運用コストも大幅に下げるほか、グループ各社向けのプライベートクラウドとして、Amazon EC2より低廉な価格を目指す。「スペック保証型のSTANDARDではEC2の74%、テスト環境向けのECONOMYではEC2の39%の価格を実現している」と語る。
また、このプライベートクラウドの構築にあたっては、VMware NSXによるネットワーク仮想化もあわせて導入されている。「サーバーの仮想化に大きなベネフィットを感じていたが、この仮想化の基盤の効果をネットワークまで適用できたら、どんなに素晴らしいだろうと考えた」(山口氏)。具体的にはオーバーレイとして迅速な展開や変更が可能なVMware NSXを採用。また、アンダーレイとしてジュニパーネットワークスのスイッチでファブリック化を推進し、構成変更の発生しないネットワークを構築した。
これにより、37台あったコアスイッチ、ファイアウォール、ロードバランサーは6台まで集約。ネットワークの管理コストも1/10に激減したほか、ファイアウォールの穴開け作業も不要になった。サーバー追加やL2スイッチの追加も数週間から数日にまで短時間化まで短縮し、運用スピードを上げることが可能になったという。
ネットワーク仮想化に及び腰なユーザーに対するアドバイスを求められた山口氏は、過去にサーバーの仮想化を推進するにあたって、パートナーといっしょに検証と実績を積み重ねてきた歴史を振り返る。そして、今回のネットワーク仮想化導入でも、チャレンジとサポートが重要だとアピール。「いっしょにチャレンジしてくれる仲間を持つことが重要。弊社は、味の素グループのネットワークを熟知しているNRIシステムテクノの方々が前向きで、既存のスキルセットからの変換にチャレンジしてくれた」と述べ、信頼できるパートナー作りとサポートが成功の鍵になると説明した。
(次ページ、オンプレミスのサーバーをvCloud Airに移行した熊谷組)