日本ヒューレット・パッカードは11月2日、分社後におけるエンタープライズ事業の戦略発表会を開催した。同社 代表取締役社長 執行役員の吉田仁志氏は、顧客企業が競争力強化を果たすための「New Style of Business」実現を、ITインフラの側面からサポートしていく同社の姿勢をあらためて強調した。
今回の事業戦略発表会は、米国本社が11月1日付けで分社化(Hewlett Packard EnterpriseとHP Inc.)されたことを受けて開催された。日本法人はすでに8月1日から、エンタープライズ事業の「日本ヒューレット・パッカード株式会社」とPC・プリンティング事業の「株式会社日本HP」の2社に分社化されている(関連記事)。
顧客企業の「New Style of Business」実現に向けた変革を支援
日本ヒューレット・パッカードは、米国Hewlett Packard Enterprise(HPE)の日本法人として、サーバー、ストレージ、ネットワーク、統合型インフラ製品、ハイブリッドクラウド、その他サービスといったエンタープライズ領域のビジネスを担当する。HPEの社長兼CEOはメグ・ホイットマン氏が務め、グローバルのHPE全体では年間売上約530億ドル(およそ6.38兆円)の事業規模となる。
エンタープライズ事業とPC・プリンティング事業を分社化した狙いについて、吉田氏は「一番の目的は、市場の変化に対応できるようにHPE自身が変革すること」だと説明した。ビジネス市場の変化に迅速に対応し、さらにはその変化をリードする(先んじる)ことができるように、意思決定とイノベーションのスピードを向上させる狙いがあるという。
また、顧客企業がグローバルな競争力を獲得するためには、ビジネスアイデアをより短期間で実行し成果に結びつけられる「New Style of Business」実現のための変革が必須であり、そうした顧客の変革を支援していくのがHPEとしての役割であることをあらためて強調した。
具体的には「ハイブリッドクラウド(ハイブリッドインフラへの変革)」「セキュリティ(デジタルエンタープライズの保護)」「データ活用(データ指向経営の推進)」「ワークスタイル変革(ワークプレイスの生産性向上)」という4つの領域で、顧客のNew Style of Businessに向けた変革を支援していく。
ここには、これまで同社自身が企業変革に取り組む中で培ってきたさまざまな発見やノウハウも生かされているという。吉田氏は、たとえばビジネス改革を継続的に実行していくためには「改革を推進しやすいインフラ環境」が求められ、そのためにはハイブリッドクラウドを取り入れることが必要であったと語る。
「HPが自社を変革していく中で理解したこと。クラウド化は戦略実現のための方法論であり、目的ではない。また、パブリッククラウドは通過点でしかなく、必ずハイブリッドクラウドが必要になるということを学んだ」(吉田氏)
ちなみに米HPは先月、パブリッククラウドサービス(IaaS)として米国で展開してきた「HP Helion Public Cloud」の提供を2016年1月末で終了することを発表している。これについて吉田氏は、HPEがハイブリッドクラウドの構築にビジネスの軸足を置いていることに変化はなく、今後はAWSやAzureなど他社パブリッククラウドとの親和性を持ち、統合管理できるハイブリッド環境を提供していく方針であると説明した。
数年後には「元気な顧客の背後には必ずHPEがいる」となるように
日本ヒューレット・パッカードとしての、日本市場における方針について吉田氏は、「簡単に言えば『日本の企業が元気になるためのお手伝いをしたい』ということ」だと語った。
具体的には「顧客志向をより強める」「顧客やパートナー企業、従業員どうしとあらゆる側面でのパートナーシップ強化」「グローバル企業として、顧客のグローバル進出の支援」「“HP Way”に基づく企業としての社会貢献」といったことを推進していくという。
「企業の変革には『痛み』も伴う。特に、顧客企業の変革をお手伝いするというのは、自社を変革するよりももっと大変な作業になる。当社の営業職も、顧客に対してもっと率直な提言をできるように関係を築き直さなければならない」「3年後、5年後には『元気なお客様は必ずHPEを採用している』『元気な企業の背後には、HPEが必ずいる』という状態を実現したい」(吉田氏)