顧客の業績に貢献する「さらなる顧客志向」のHPを――。1月1日付けで日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の社長執行役員に就任した吉田仁志氏が、8日に行われた記者会見に出席した。同会見では、日本HPを含め今年実施されるHPの分社化についても、その狙いや詳細が明らかにされた。

日本HP 代表取締役 社長執行役員 エンタープライズグループ事業統括 吉田仁志氏。「HPを通じて社会、日本、世界に貢献できるチャンスと考えて入社した」
「ソフトウェア業界における経験が、これからのHPに成功をもたらす」
吉田氏は、伊藤忠商事や同グループ会社、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ、ノベルなどを経て、2006年から昨年まではSAS Institute Japanの代表取締役社長を務めていた。
記者会見ではまず、前任者であるHP シニアバイスプレジデントのジム・メリット氏が登壇。HPがグローバルで分社を実施する今年は「日本HPにとっても重要な年、『新たな門出の年』になる」と述べ、吉田氏を新社長に迎えることで「日本における成功を確実なものにしていきたい」と切り出した。

HP シニアバイスプレジデント エンタープライズグループ&マネージメントディレクター アジアパシフィック&ジャパン担当 ジム・メリット(Jim Merritt)氏。昨年4月から日本HPの社長執行役員を兼務してきた
エンタープライズIT業界で長いキャリアを持つ吉田氏とは旧知の間柄だと語るメリット氏は、吉田氏を任命した理由について、経営者としての手腕と成功実績、高い顧客志向などに加えて、「ソフトウェア/サービス/ハードウェアの全分野における経験を持つこと」を挙げた。特にソフトウェア分野における経験が、これからのHPにおいては価値を持つという。
「SDN、SDDC、オートメーション、ワークロードのプロビジョニングなど、われわれHPのインフラは、これからどんどんソフトウェアの世界に近づいていく。そのため、これからのHPの成功にとってはソフトウェア分野の十分な知識を持っていることが重要だと考えた」(メリット氏)
「HPならば変革の先頭に立って世の中を変えていける」
続いて登壇した吉田氏は、これまで外部から見てきたHPは「顧客志向が非常に高く、真面目な企業文化を持っている」という印象で、「自社の利益追求だけでなく、事業を通じて社会に貢献しなければならないという『HP Way』の考え方」にも強く共感しているという。

経営者としての新天地にHPを選んだ理由について、吉田氏は、上述した企業理念への共感に加えて、HPがハードウェアからソフトウェア、サービスまで幅広いポートフォリオを持ち、IT業界に大きな影響力を与えられることを挙げた。
「これから企業や社会がどんどん変革していく中で、ただそれに対応するだけでなく、HPならば変革の先頭に立って世の中を変えていけるのではないか」(吉田氏)
まだ就任4日目であり、具体的な事業戦略については「まだまだこれから考えていくところ」と語る吉田氏だが、不変の目標は「さらなる顧客志向」の実現だという。
「元々HPは高い顧客志向を持っているが、それをベースとして、さらに顧客企業の『業績』に貢献するためにはどうしたらいいか。まずこれに取り組んで行きたい」「日本を元気にするために、顧客やパートナーと『1つのチーム』となって、世の中に貢献していく」(吉田氏)
日本HPも分社化へ、「成長の加速化」を目指す
なおHPは昨年10月、エンタープライズ事業を担う「Hewlett-Packard Enterprise」と、PCなどパーソナルシステム/プリンティング事業の「HP Inc.」への分社計画を発表している。メリット氏は、この分社化は世界全体で実施するものであり、日本HPもその対象であることを明言した。
分社化の狙いを、メリット氏は「成長の加速化」だと表現した。2015年度は、同社会長、社長兼CEOのメグ・ホイットマン(Meg Whitman)氏が推し進めてきた5カ年計画で「成長を加速する年」に当たる。分社化は10月末までに完了する予定。
「分社することで、IT業界の変革スピードに追従することが可能になる。それにより、顧客へのフォーカスをさらに強めていく。また、顧客やパートナーとの関係をシンプルなものにすることで、彼らや株主により高い価値を提供できる」(メリット氏)
なお、日本HPにおける分社後の経営体制などについては明らかにされなかった。ただしメリット氏は、分社後、吉田氏はエンタープライズ社側を率いることを示唆した。
