最新ユーザー事例探求 第39回
コニカミノルタのクラウドプリントソリューション導入、背景を黒田知宏教授に聞く
「高度なセキュリティを守りつつ便利に」京大病院の取り組み
2015年09月15日 06時00分更新
セキュリティ維持と新たなニーズとの板挟み、解決策を探る
そんなとき、黒田氏はたまたま出席したシスコのイベントで、コニカミノルタとシスコのクラウドプリントソリューションが展示されているのを発見する。「あれ、これを使えばセキュリティレベルを落とさずにプリントができるんじゃないか、と思いました」。2013年2月のことだ。
京大病院のシステム構成図(クラウドプリントソリューション導入後)
京大病院における同ソリューションの仕組みはこうだ。エンドユーザーがブラウザの「印刷」ボタンを押すと、DMZにあるインターネット閲覧用のサーバーから、コニカミノルタのクラウドに印刷データが送信される(どの院内プリンタに出力するかは端末にひも付けられており、その情報も付与されている)。
一方で、院内のサーバー室にあるシスコの機器(Cisco edge 300)は、クラウド上の印刷サーバーに常時ポーリングをかけている。もし印刷サーバーに印刷ジョブデータがあれば、それをダウンロードし、指定された院内プリンタに転送する。これでプリントアウトが実行される。
いずれもアウトバウンド方向(内→外)のセッションであり、新たにファイアウォールのポートを開放することもなく、院内システムのセキュリティには影響を与えない仕組みだ。
黒田氏はさっそくコニカミノルタとの打ち合わせを進め、2013年10月からは実証実験をスタート。そこで院内ユーザーからも好評を得られたことから、2014年春に本番運用を開始している。
ちなみに、このソリューションはプリンタ(複合機)のメーカーを問わない。事実、京大病院でも、コニカミノルタではなく他社のプリンタを利用している。黒田氏も「プリンタまで全部入れ替えなければならなかったとすれば、予算の問題も大きく、実現していなかったでしょう」と語る。
「あれにも使えるかも……」常にユーザー視点で考える
黒田氏は、このクラウドプリントソリューションの新たな用途も模索中だ。クラウド上の印刷サーバーにはインターネットからアクセスできるので、たとえば訪問看護や遠隔医療における処方箋のプリントアウトに使えるだろうと、アイデアを語る。薬を院内処方する場合であれば、出先の現場からから直接、処方箋を院内にプリントアウトすることで、院内の薬剤師がすぐに調合に取りかかることができ効率的だ。
こうしたアイデアを楽しそうに話しながら、黒田氏は「そういえば『あれ』にも使えるかも……」と、また別のアイデアを語り始めた。京大病院には、小・中学生が入院治療をしながら教育を受けられる院内学級(京都市立桃陽総合支援学校 京大病院分教室)がある。その院内学級で使う教材や教科書をプリントアウトできないかと、相談を受けていたところだという。
「院内学級用のネットワークはVLANで院内ネットワークと切り離されていて、京都市教育委員会を経由してインターネットに接続されているんです。だから、院内のプリンタからは出せないなと思ってたんだけど……これ行けるわ。提案してみよう」
インタビュー中、黒田氏は何度も「ITは道具にすぎない」と口にした。テクノロジーの側からではなく、ユーザーニーズの側からアイデアを練り、道具として必要ならばIT“も”使う。そういうスタンスだ。今回のクラウドプリントソリューションの導入についても、自身での評価は次のとおりだと語った。
「ユーザーがまったく仕組みを意識せずに使えている。もしかしたら、システムが変わったことすら知らないかもしれない。でも、それでいいんだと思いますよ」

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