アプリやエフェクター内蔵チューナーとの差別化
杉原 ところで、これご存じですか?(と言いながら、Pitchblack Proを箱から取り出す)
―― おっと、これは我々老眼世代(50代前半)にはやさしいんじゃないですか。
杉原 でしょ、我々にとってはそこが大問題ですよね。結構遠くからでもわかりますよ。これは私が設計しました。ふふふ。
―― でもラックマウント型は重くて、電車移動のアマチュアには使いづらいんですけど。
杉原 それが軽いんですよ。ペダルボードにも置けるくらいのサイズだし。ちょっと持ってみてくださいよ。
―― げげっ、これは軽い……。本体も鉄かと思ったらプラスチックだし、奥行きも全然ないんですね。
杉原 もう、ちゃんと見てくれなきゃダメだなあ。
―― ……あ、これは失礼しました。じゃあ、この妙に奥行きのある表示は一体どうなっているんですか?
杉原 普通のLEDが個数分入っているだけです。このウインドウに秘密が隠されているんですよ。他社で作っているもので、うちの技術じゃないんですが。
市川 こういう不思議な材料があったら取り入れてみようということで、リサーチは普段からしていますね。
―― 最後に、チューナーの未来についてですが、某ギターメーカーの今年のモデルのほとんどに、モーターでベグを回すオートチューニングシステムが載りました。ああいうものはどう思われますか? 表示部がいらないという意味で、老眼にも優しいチューナーなわけですが。
市川 便利なのは便利だと思いますが、精度や実用性の面では、まだ課題は多いなと感じています。
―― もひとつ、最近チューナーはエフェクターにも付いているし、スマホのアプリもあります。そういうものとはどう差別化していくんでしょう?
肥後 手軽さが一番違うと思うんですね。スマホをクリップチューナーのようにヘッドに挟むわけにもいきません。デザイン次第で、アプリよりもかゆいところに手が届く感じは出せていると思います。
市川 それと視認性ですよね。スマホではっきりわかりやすい表示をするのは難しいですから。
杉原 そういうわけなのでPitchblack Proを買ってください。
―― わかりました(笑)。今日は長時間ありがとうございました!
著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)
1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ
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