未来を描くスタートアップとマイクロソフトのストーリー 第6回
モノを売るノウハウを集めたプラットフォームを目指す
接客ロールプレイングのクラウド化で営業研修を変えるTANREN
2015年07月21日 07時00分更新
営業マンの接客対応などを動画として蓄積・活用できる「TANREN」。10年にもおよぶ携帯電話の営業研修経験を経て、TANRENを立ち上げた佐藤勝彦さんは、変化の激しい市場環境を生き残るための法人向けの教育サービスに高いニーズを感じている。
スマホが実現できる世界観を顧客に提案するために
TANRENは営業用のロールプレイング動画をクラウド上で共有する教育サービスだ。オーナーやマネージャーのリクエストに従い、店舗でのロールプレイング動画をスタッフが登録する。こうして動画を蓄積し、定期的に見直すことで、集合型の営業研修なしに、現場の営業スキルを向上できる。まさにTANREN(鍛錬)だ。
TANRENの価値は、営業研修に特化し、必要な機能がまとまっていること。確かに動画配信サービスなどを使えば似たことは可能だが、セキュリティや管理の点を考えると、TANRENの方が優れている。単にロールプレイング動画を共有するだけではなく、オーナーやマネージャーが簡単な操作で評価でき、評価が点数となって、店舗や個人ごとの“鍛錬度”を算出することも可能。また、営業マンの鍛錬度をベースに“スタープレイヤー”を発掘でき、その場で動画を確認することもできる。
TANRENを立ち上げた佐藤勝彦さんは、約10年に渡って携帯電話の店舗営業に対して営業研修を行なってきた人物。「たとえば、スマホとカメラを組み合わせた“世界観”を、現場の営業マンはお客様にどのように説明すればいいのか? こうしたことを30~40人くらいの部屋で、佐藤が講師として代理店やキャリアの方に講演してきた。実際に店舗に出向いて、ロールプレイングを回すことも多い」(佐藤さん)といったキャリアを持っている。数々の研修をこなしてきた百戦錬磨の猛者だけに、とにかくエネルギッシュという印象だ。
街を歩けばケータイショップに当たるという日本のケータイ販売の現場。市場が飽和状態になり、生き残りがタフな市場でもある。「店舗数もキャリアで2500、Y!Mobileと併売をあわせて2000、さらに流通と量販があるので、スタッフ総数は30万人と呼ばれている。しかし、大型店舗化は一層進んでいる一方、ARPU(顧客単価)はどんどん下がっている。こうした中、店舗がどうやって儲けるかを考えたら、ケータイの副商材などになる」と佐藤氏は指摘する。販売店やオーナーの合併や買収も増えており、違う文化の会社が集まった瞬間で営業改革が必要になる。こうした中、顧客に価値提案し、満足度を追求する営業研修は、今後どんどんニーズが高くなると見込んでいる。
こうした営業研修は現場の売上増に直結する大事な施策だが、マネージャーやオーナーにとってはいくつかの課題があるという。佐藤さんは「店舗のマネージャーはシフトがカツカツで、なかなか営業研修ができないと嘆いている。オーナーさんから見ると、マネージャーごとに営業手法が違うことに悩んでいる」と語る。
こうした課題に向き合ってきた佐藤氏が教育+テクノロジーの威力を実感したのが、小学校の教育用にベネッセが配布しているチャレンジタブレットだという。「うちの息子が90点取ったことが私にメールで通知されて、忙しいとは思いますが、息子さんを褒めてあげてくださいとリンクが添えてある。そのリンクをクリックすると、10種類くらいの褒め言葉がテンプレートで並んでいるんです。このうち1つを選ぶと、週末に息子が来て、『お父さん、忙しい中、温かい励ましの言葉ありがとう!』って駆け寄ってくるんです。息子の携帯を見ると、口語体で忙しい中打ったような文面がちゃんと添えられている。これはデジタルじゃないとできない。感動しました」と佐藤さんは語る。
(次ページ、デジタルだからこそ実現できる新しい法人向け教育)
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