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未来を描くスタートアップとマイクロソフトのストーリー第5回

高い技術力で市場を切り拓く国産FinTechベンチャーの雄

次世代通貨ビットコインを技術力でサービス化するbitFlyer

2015年07月13日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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bitFlyer(ビットフライヤー)は仮想通貨「ビットコイン」の販売を手がける金融スタートアップ。高いセキュリティを実現するMicrosoft Azure上に自前のビットコイン取引システムを実装したbitFlayerは、高い技術力を売りに次世代のFinTechベンチャーとして市場のリーダーを目指す。

国内初の取引所を開設したbitFlyer

 ビットコイン(bitcoin)は安価な決済手段として注目を集める仮想通貨。通貨の発行や取引はすべてピアツーピアのネットワークで行なわれ、中央銀行が介在しない。また、取引台帳をネットワークのノード上で分散している保持する「ブロックチェーン」と呼ばれる仕組みが特徴的で、取引履歴を表わすチェーンの長さで信頼性が担保される。

 大手取引所マウントゴックス社の破綻以降、ネガティブなニュースで扱われることも多いビットコイン。一方、ネットワーク全体で信用を担保するという先進的なテクノロジーに根ざしたビットコインは次世代通貨としての期待も高い。このビットコインにいち早く目を付け、国内初の取引所を開設したのがbitFlyerだ。

 bitFlyerを立ち上げた加納裕三さんは、大学生・社会人でプログラマーを経験した後、米国の金融機関でトレーダーとして勤めていたというユニークな経歴を持つ。「Fintechベンチャーとしていつか起業したいなと思って、ビットコインに興味を持った。2010年頃は本当におもちゃのお金だったが、(仮想通貨を合法的な金融サービスとした)2013年のバーナンキ発言で価格が10倍に跳ね上がって、人々に支持されるときが来た、これは世界を変わるかもしれないと思い、2ヶ月後に起業した」と語る。

bitFlyer CEO 加納裕三さん

 ビジネス面での革新性のみならず、ビットコインはテクノロジーとしても魅力的だという。「面白いのは、やはりブロックチェーン。取引の安全性を担保する多数決や、取引を証明させるために無駄な仕事をさせるプルーフ・オブ・ワークの概念、署名を駆使した取引など、複数の技術を複合させて実用的にしたという点が画期的」と加納さんは語る。

セキュリティを考えればMicrosoft Azureしかない

 ビットコインに魅せられた加納氏は、プログラマーとトレーダーとしてのバックグラウンドを活かし、bitFlyerのシステムを設計。クラウド前提で構築されたシステムは、プラットフォームとしてMicrosoft Azureを採用した。

 この背景にはセキュリティがある。ビットコインの漏えいが破綻の引き金となったマウントゴックスの例もあり、bitFlayerでは非常に高いレベルのセキュリティをシステムに実装している。加納さんは、「セキュリティを考えると、ほとんど選択肢がなかったというくらいAzureは圧倒的。キューやBLOB、キーバリューなどのサービスも充実しているし、地理的にデータが冗長化されているので、安心感も高い」と語る。

 Microsoft Azureに対しては、ヘビーユーザーとして積極的にフィードバックを行なっており、実際にセキュリティ、データベース、管理など数々の更新点が得られたという。「開発者が低レイヤーを意識せず、アプリケーションレイヤーだけで完結するように、Azureの完成度を上げてもらえば、非常に開発効率は上がると思います」(加納さん)。

 現在のbitFlyerを支えるのは、ビットコインの取引や送金、決済などを可能にする複数のデーモンがAzure上で動く巨大なシステムだ。テクノロジーに明るいメンバーでビットコインのコアテクノロジーであるブロックチェーンを独自に実装し、視覚化できる「ChainFlyer」を開発。「今まで概念だけだったブロックチェーンのアドレスやトランザクション、ブロックなどもすべてビジュアルで把握できる」(加納さん)。

bitFlyerの取引ツール

ビットコインへの悪しきイメージを超えて

 今後は「ビットコイン2.0」と呼ばれる次世代の技術やサービスの開発を進める。加納さんは「基本的には技術ドリブンの会社なので、僕らに作れないものはないと思っている。他社と比べて、開発・技術能力は圧倒的に差がある」とアピールする加納氏。現在は個人ユーザー向けにビットコインの販売と売却を手がけているが、7月には高速取引、数々のオシレーター、ポジション管理、ニュースや損益計算などトレーダーに必須の機能を国内で初めて実装した「bitFlyer Lightning」をリリース。今後はビットコイン送金やリアル/ネットの決済のほか、国内初となるマルチシグネチャ対応サービス、遺書などで利用できるファイルの存在証明など先進的なサービスを提供していく。

 このように技術面での障壁はないが、ビットコインを巡る市場動向やマインドセットに関しては課題を抱えているのも事実だという。今でこそ15名の従業員を抱え、赤坂にオフィスを構えるまでに成長したが、「起業して1ヶ月でマウントゴックス社が破綻。本来関係ない一企業の破綻でビットコインのイメージが悪くなり、かなり困難な船出だった」(加納さん)とのことで、ここまでの道のりは平坦ではなかった。いまだにネガティブなイメージも払拭できず、海外進出するにも法規制も厳しいという逆風もある。

 しかし、海外ではマウントゴックスの話は過去の話で、すでに大手もコマース事業者もビットコインでの決済を始めている。また、数多くのFinTechベンチャーがビットコインを含む仮想通貨の市場で新しいビジネスを模索している状況。日本でも楽天やNTTドコモなどがすでに先行投資を進めており、リクルートもbitFlyerの第三者割当増資を引き受けている。「日本での普及は遅いが、いつかキャッチアップすると思う」と語る加納さんは、今後も地道に利用価値と市場インパクトを説明し続けるという。

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