パナソニックは、水素社会の実現に向けた取り組みについて説明した。
パナソニックは、先端研究本部を2014年10月に設立。その中に、環境・エネルギー研究室を配置し、水素に関する研究に取り組んでいく体制を整えている。
パナソニック 先端研究本部環境・エネルギー研究室の小原英夫室長は、「水素は、宇宙で最も豊富にある元素であり、燃焼すると水になり、CO2を出さずにクリーンであるという特性を備える。また、高効率で電気に変換できること、多様なエネルギーから製造が可能という特徴もある。さらに、電力と比較して貯蔵や運搬が容易という特性も備えている。
政府では、官民連携により、水素利用の飛躍的拡大、水素発電の本格導入、水素供給システムの確立によるカーボンフリーという3つのフェーズに取り組んでいるが、パナソニックでは、製造、貯蔵、利用というバリューチェーン全体において、研究を本格化する」と語る。
エネファームは、水素を活用した発電機
すでに10万軒を超える住宅で水素の電力を利用
水素を家庭で使用するという観点では、パナソニックはすでに実績を持っている。
同社では1999年から燃料電池の開発に着手。2009年にはこれをエネファームとして一般販売を開始。これまでに4世代の製品を投入してきた。
「エネファームは、都市ガスから作った水素を活用した発電機といえるもの。燃料処理器で水素を生成し、水素から効率的に発電できる。燃料電池は、これまでに業界全体で10万台を突破しており、すでに10万軒を超える住宅で水素の電力を使っている。水素社会はすでに始まっている」(小原室長)と位置づけた。
第4世代のエネファームでは、バックアップ熱源機内蔵の一体型と、別置型をそれぞれラインアップして選択肢を拡大。スリム&コンパクト設置により、マンションなどへの設置を可能にしたほか、停電時発電継続機能を内蔵しながら、希望小売価格で初めて160万円を切るといったコスト削減も図っており、「都内では63%、神奈川県でも50%を占める集合住宅への対応を図り、都市部での普及拡大に取り組む」(小原室長)としている。
マンション向け燃料電池は、昨年度だけで8物件600戸に採用されており、今後もさらなる採用拡大を見込んでいるという。
また、海外では、電気やガスなどに比べて価格競争力がある地域において、燃料電池の需要があると判断。欧米での需要拡大を見込んでいるという。パナソニックは、2014年4月に、ドイツ大手ボイラーメーカーのフィスマンと家庭用燃料電池を共同開発。欧州での販売を開始していた。
一方で、トヨタ自動車がMIRAIを投入するなど、水素を利用した自動車も実用化されており、こうした動きも水素社会の拡大に貢献すると考えている。
純水素型エネファームを2020年めどに実用化
政府の目標では、2020年にはハイブリッド車の燃料代と同等以下の水素価格の実現のほか、2025年には同車格のハイブリッド車同等の価格競争力を有する車両価格の実現を目指している。
同様に政府では、2020年代半ば以降に、水素発電の本格導入に向けた大規模な水素供給システムを確立するとともに、2040年頃には、市場全体でのカーボンフリーの実現を目指している。「水素は、将来のエネルギーインフラの一翼になると期待している。住宅水素インフラは、これからの技術として、官民をあげて実現していくものとなる。パナソニックもその一端に担うことになる」(パナソニック 専務取締役 技術担当の宮部義幸氏)としている。
利用においては、都市ガス型エネファームで実現しているガスからの発電に加えて、2020年の実用化をめどに、純水素型エネファームを開発する計画を明らかにしたほか、高密度貯蔵技術を活用することで、貯蔵に関するブレイクスルーに挑戦。
また水素製造の面では、2020年から2030年かけて太陽光から直接水を分解し水素を製造する技術や、高効率非金属電極で水分解し、水素を製造する技術を活用して、水素製造の低コスト化に取り組む姿勢を示した。
2020年に実用化を目指す純水素燃料電池は、2012年から山梨県甲府市米倉山において、東京電力と共同で実証実験を開始しているという。