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マイクロソフト・トゥディ 第144回

愛媛県のICT活用“囲い込み戦略” - 日本MS 樋口社長・愛媛県 中村知事対談

2015年05月20日 11時00分更新

文● 大河原克行、編集●ハイサイ比嘉/ASCII.jp

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若者や中高生に訴求、地元雇用につなげる取り組み

中村 愛媛県では、ジョブカフェ「愛work」サービスを行なっています。これは、愛媛県が設置した若者向けの就職支援センターなのですが、ここでは単に就職を支援するだけでなく、地元の企業に自らを訴求してもらうことにも力を注いでいます。

 愛媛県には、世界で戦える中小企業が数多く存在しています。しかし、最終製品を作っていないため、愛媛県内でも知られていない企業が多い。結果として、若者が自分の故郷にそんな企業があるとは知らずに、東京に就職しようと考えてしまうのです。

 現在、愛媛ものづくり企業「スゴ技」データベースを作り、中学生や高校生たちに、自分の故郷には世界で戦っている企業がこれだけあるんだということを現場に行って知ってもらうプログラムを開始したんです。

 例えば愛媛県には、クレーンに採用されている減速機のギアを作っている会社があり、世界の建設機械の40%に使われているんです。そんな会社があることを地元の人が知らないのです。これは、子どもたちに知ってもらうだけでなく、学校の先生にも知ってもらう必要もある。ですから、先生にも、愛媛県の企業を知ってもらうにはどうするかといった活動を同時に行なっています。子供のころから、地元のあの企業で働きたいと思ってもらい、地元雇用につなげる取り組みをしているわけです。この仕組みは、ジョブカフェ愛workともリンクさせています。

 これまでの課題は、雇用ニーズがあってもマッチングできていないという点でした。こういう学生がいたら欲しいと企業側がいっても、学生たちに知られていないので、マッチングがうまくいかなかったのです。

クラウドで、起業ハードルが下がっている点も見逃せない

樋口 マッチングにおいても、ICTは大いに役に立つことができると考えています。特に、就労支援のマッチングでは、効果を発揮できるのではないでしょうか。ただ、その際には、データを何の目的にために、どう生かすかということを見据えて活用することが大切です。これやったら便利だね、というぐらいでは、成功しない。分析と目標をしっかりと立てて、そのために情報技術をどう活用するかが大切だといえます。

 一方で、現在の若い人たちにとっては、ICTによって、起業のハードルが下がっている点も見逃せません。サーバーなどの情報システムに投資をしなくても、クラウドを活用することで会社を立ち上げることができますし、クラウドを使って、全世界に情報発信ができる。センスのある人は、どんどんいいアイデアを生み、それをもとに、世界で戦えるようになった。これもICTの大きなパワーのひとつですね。

 ICTスキルを身につければ、就労に生きるのは確かです。さらに起業につなげ、企業を成長させることもできるわけです。

愛媛県が挑む農業クラウド

中村 愛媛県で、もうひとつ取り組んでいるのが、農業クラウドです。農業クラウドは、4年前から行なっています。愛媛県には柑橘類をはじめすばらしい農作物が多い。日本一のシェアを持っているものもあります。

 しかし、農業の生産現場をみると、現在でも経験や勘が頼りになっています。この気候状況であれば、水や肥料をこれだけやればいい、という知恵やノウハウが必要。ここにICTを導入すれば、生産性が飛躍的に向上する可能性があります。愛媛県では柑橘類を中心に、農業クラウドの導入を始めました。気象情報や海水の気温、土の温度や湿度といった情報を加えながら、この状況であれば、どういう水のやり方がいいのか、という模範的な生産体系が生まれ、生産性向上につながると考えています。

樋口 エキスパートの頭の中にしかないものを、センサー情報をもとに見える化することで、生産性を高めたり、事前に予兆を検知したりできます。特に農業は、アナログの固まりの世界です。これから大きく変化すると思います。

 牛にGPSセンサーをつけて、通常との動きの違いを捉えて、事前に対策を取るといった取り組みも始まっていますね。現在は、自動車がネットワークにつながる「コネクテッドカー」が流行っていますが、これは、牛がネットワークにつながる「コネクテッドカウ」ですね(笑)

ICT業界への期待

中村 農業分野をはじめ、あらゆる分野において、ICT活用に対する期待感が膨れ上がっています。ICT業界には、現場が求めるニーズをうまく受け止めていただき、即効性のあるICT技術を生み、それを我々が活用し、それによって公共サービスが拡充し地域の活性化に結びつくということを期待しています。

樋口 日本は少子高齢化や限界集落問題があり、さらに2020年に向けて、多くの外国人観光客を受け入れる必要もある。地域の魅力を向上し発信することを、ICTを通じて支援したい。日本マイクロソフトとしても、ICTによって、人が集い、それによって活性化していくことを支援したいですね。


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