AMDは20日、GPUとディスプレーのリフレッシュレートを同期しティアリングや遅延の発生を回避する画面同期技術「FreeSync™」に対応したグラフィックスドライバー「Catalyst 15.3 Beta」を公開した。このFreeSyncとはいったいどんな技術なのだろうか?

AMD FreeSync テクノロジー
今回は国内初のFreeSync対応液晶となりそうなLGエレクトロニクス製29インチウルトラワイド液晶ディスプレー「29UM67-P」をレビューする機会に恵まれた。実際FreeSyncはどう動くのか、早速チェックしてみたい。
画面のリフレッシュ間隔をディスプレーと同期させる
AMD FreeSync テクノロジー
GPUの画面書き換え(リフレッシュ)のタイミングは、従来画面(液晶)側の「垂直同期(V-Sync)」に従属させるのが普通だった。しかしこのやり方では映像がずれて表示される“ティアリング”や、表示遅延という代償が発生する。
これを解決するには、画面とGPUの主従関係を逆転させ、GPUが映像を送出するタイミングに画面をリフレッシュすればいい(後述)。
それを実現するためのディスプレー同期技術の先駆けといえば、NVIDIAの「G-SYNC」だ。しかしNVIDIAはこれをGeForce環境専用技術としたために、Radeonユーザーは使用できなかった。
そこで今度は、Radeon環境で使えるディスプレー同期技術「FreeSync」に対応した液晶が4月に発売されるわけだ。このFreeSyncはVESA規格の“Adaptive-Sync”として採用されている技術なので、業界標準として今後普及していくことが予想される。
従来の「画面主/GPU従」のシステムは、GPUの描画と画面出力が液晶側の画面書き換えのタイミングとシンクロしていればまったく問題はない。標準的な「リフレッシュレート60Hz」液晶の場合画面は1秒間に60回、即ち1フレームあたり16.6666……ミリ秒以内でGPUが処理できれば、問題はないのだ。
しかしGPUのパワー不足などで16.6666……ミリ秒以内に描画処理が終わらなかった場合、画面の更新は次のリフレッシュレート到来まで見送られる。これはユーザーの視点からすると、画面が1フレーム前の映像で一瞬止まってしまうため“カクッ”となったように見える。
Frame1の映像はRefresh1の時間(16.6666……ミリ秒)で処理され、Refresh2の白線のタイミングで画面に表示される。Refresh2の時間内にFrame2の処理が終わればRefresh3の開始と同時に画面に出るはずだが、Frame2の処理が遅れたのでRefresh3が終了するまで画面はFrame1のまま。つまり、まるまる1フレーム分画面が“硬直”し、その間ユーザーのレスポンスはできなくなってしまう。
このカクつきは液晶側のV-Syncに従っているせいなので、V-Syncを無視して描画処理を行なえば、液晶が原因のカクつきは回避できる。しかしV-Sync無効にすると、今後は画面のリフレッシュタイミングに関係なく次の映像が送られてくるので、中途半端に画面が書きかわる“ティアリング”が発生する。
画面はカクつかないが、ティアリングが画面中央付近で発生すると、遠景の視認性がガタ落ちになるためゲーマーとしてはこれも避けたいところだ。
これを回避するのがAMDのFreeSyncであり、NVIDIAのG-SYNCである。どちらの技術もGPUから映像送出に合わせて画面をリフレッシュする。つまり“リフレッシュレート可変”を可能にする仕組みを液晶に追加することで、見た目を滑らかにするというものだ。
FreeSyncとG-SYNCは基本原理は以上のような原理で動作する。DisplayPort利用時のみ効くという点も同一だ。だが、両者の違いは実装方法だ。先行するG-SYNCは液晶側に専用基板(関連記事)が必要になるため、映像入力は基本DisplayPortのみになる(多入力対応も可能だが製品は未発売)。
しかしFreeSyncは専用基板を必要としないため、製品コストを抑えることができ、なおかつ多入力対応も容易だ。しかも、FreeSyncはVESA規格“Adaptive-Sync”として標準化されているため、理論的にはRadeon以外のGPUでも利用可能なのだ(ただ後述するが、現状はRadeonのみの対応となる)。
(→次ページヘ続く 「FreeSyncに必要なもの」)

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