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佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第10回

HD Impression 阿部さんはこれに魅せられた:

聴けば分かる、ハイレゾで聴く「サラウンド」の実力 (3/6)

2015年02月10日 17時00分更新

文● 編集部、聞き手●佐武宇綺

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転機になったSACD、藤田恵美『camomile Best Audio』

佐武 そして、今回聴くクラシックの録音を手がけるようになったんですね。

阿部 はい。クラシックもそうですが、サラウンドの録音をやらせてもらう最初のきっかけは、Le Coupleっていう『ひだまりの詩』っていう有名な曲を歌っていたグループがありますよね。僕はそのひとり藤田恵美さんの録音をLe Couple時代からずっと担当していたのです。

Image from Amazon.co.jp
camomile Best Audio

 英語のカバーアルバムを何枚か作っていて、それがアジア圏で「音がいい」と評判になりました。でも日本では全然売れていなくて。「何とかして日本でも売上を伸ばしたいな」と考えていました。そこでオーディオ評論家の先生方などにお話を聴いたりしなからですね、いろいろと考えてみたんです。

 そんな経緯で「ソニーのオーディオ試聴室で一緒に作ってみませんか」という機会に恵まれました。そこでさっき言った本当の“サラウンドの音”をいろいろと聞くことができたんです。そして、かな~りビックリしてしまった。

佐武 そうだったんですか。よほどの衝撃があったんでしょうね。

阿部 ええ、音楽にはこういう表現方法もあるんだ。まさに“その感動”を届けたいと思いました。

佐武 (音響メーカーの視聴室は何度か取材していますが)今回の試聴室みたいに、ここまで環境が整っていると相当すごいだろうなって思います。

阿部 (笑)。音響制作をする立場ではこういうしっかりとした環境があると助かりますね。細かいところまで調整する際、その違いがわかったほうがいいでしょう? そのための環境なんです。

音が上から降ってくる感覚というコメントに、半信半疑の佐武さん。

佐武 (音が上から降ってくるような空間の表現は)2本のスピーカーだけではやはり難しいものなのでしょうか?

阿部 う~ん。近いところまではいけるとは思うのですが、やはり前だけから鳴る音になるので、後ろから聞こえる音の再現はなかなか難しいんですね。技術的に、ある程度までなら迫れると思うんですが。

佐武 ということはこうした5.1chのシステムが、もっともっと世の中に広がらないといけないわけですね。

阿部 おっしゃるように、日本はまだまだサラウンド環境が整った場所が少ない面はありますね。ただし最近では、サラウンドミックスをヘッドフォンに落とし込むソフトが出てきて、だいぶ普及してきました。それを使ってみるのもひとつの手ですね。

 自分がいま持っているイヤフォンのまま、サラウンド体験ができますから。

佐武 えっ!! 今のままでいいんですか?

阿部 はい。

佐武 それは助かります! オーディオに詳しくない人はなかなかこういう環境を作れないと思うので。

阿部 そうなんです! プラグイン見たいなものを追加するんですが。その技術がだいぶ進んできていて……。昨年末ごろからソフトも出てきています。今年はヘッドフォンを“サラウンド体験”がより進んでいくと思いますね。音楽はもちろんですが、映画やアニメの臨場感も増すと思います! 

佐武 あ~やばい、超楽しみです!!

協力してもらえるアーティストとイチからコンテンツを企画したい

佐武 優れたサラウンド録音を提供するために、レーベルを立ち上げたと聴きました。その理由は、やっぱりサラウンドを広めたい、極めたいのでしょうか?

阿部 少し内輪的な話になるのですが、レコーディングエンジニアはCDそのものを制作するわけではないんですね。アーティストさんがいて、所属のレコード会社で企画が通って、初めてエンジニアが呼ばれるわけです。だからその段階で「今回はサラウンドで収録してみてはどうですか?」と提案しても、「はっ!?」と言われて終わっちゃいます。最初から企画するために自分のレーベルを作って、協力してくれるアーティストさんを探すところからやりたかったんです

佐武 それほど魅力があるサラウンド。わ~、聴きたい~。じらされてる感じです(笑)。普段はどんな音楽を聴いてらっしゃるんですか?

阿部 そうですねぇ……。仕事以外の音はなかなか難しいかなと思います。でも勉強として色々なものを聴いていますよ。

佐武 こういう音に慣れてしまうと普段の音がもの足りなく思えないですか?

阿部 そんなことはありません。場合場合で楽しみ方はあると思います。

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