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佐武宇綺が聞いちゃいます オーディオのココが知りたいです! 第10回

HD Impression 阿部さんはこれに魅せられた:

聴けば分かる、ハイレゾで聴く「サラウンド」の実力 (2/6)

2015年02月10日 17時00分更新

文● 編集部、聞き手●佐武宇綺

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本当のサラウンドを知り、その世界の虜になった

佐武 阿部さんはサラウンド録音のお仕事をする以外に、ステレオ録音のお仕事もされているんですよね。

スピーカーが水平方向にしかなくても音が自然に上へと上がっていく。それが本当のサラウンド再生だと話す阿部氏。

阿部 はい、もちろん。それに加えて収録した音を“サラウンドにミックスする”仕事も、昔から普通に手がけていました。でも“本当のサラウンド”、つまりいま言ったような高さ方向にまで音の像が広がっていくような“臨場感”が実現できると知ったのは、かなり後になってからです。これに本格的に取り組み始めたのが7~8年ほど前で、当時手がけた仕事でいろいろと教えてもらいながら、この世界にはまってしまったわけです(笑)。

佐武 魅力に気づいた!! そうだったんですね!

阿部 少し話を戻します。人間の耳はホールで言えばさっきいったような天井の「高さ」、外にいる場合でも「どこから来た音か」が分かるじゃないですか。右上とか、後ろとか。

佐武 そうですよね。

阿部 あれって実際は左右2つの耳だけで判断してますよね。初めに聞こえた音や何かに跳ね返って聞こえた音など、いろんな音を頭の中で整理して、脳が「ここで音が鳴っている音だ」って判断するわけですよ。だからマイクをうまく設置して、あちこちから来るいろいろな情報をなるべく詳細に録ることができれば、現実により近い場所を特定しやすくなっていきます。

佐武 これが音の空気感とかそういうものに関係してくるんですね! それを再現できるっていうのは、まだ体験していないんで何とも言えないんですが……。いやぁ、早く聴いてみたい!!

阿部 (申し訳なさそうに)いま準備中なんで、もうちょっとだけ待ってくださいね(苦笑)。

バンド活動から、いい音を作り出す仕事への関心が芽生える

佐武 私たちはこの企画で「音とは何?」っていう疑問を、さまざまなプロの方々に投げかけています。順番に聞いていきたいのですが、その前に、音に興味を持ち、エンジニアになられたきっかけは何だったのでしょうか? 普段から音楽に触れて育ったとか。

やはり音楽には興味があったのですか?

阿部 音楽ですかぁ……僕の場合、10代のころからずっとバンド活動をしていましたね。

佐武 学生時代に。

阿部 そうですね。「ミュージシャンになりたいな」っていう気持ちで、ずっとドラムを叩いていました。ただ、もともと機械やオーディオも好きで「このCDやレコードはいい音がしている」なんて思いながら聴くことが多かったんですよ。その延長で、自分のバンドで演奏した音を簡単に録音してみたり。

 それが楽しいと思ったのがきっかけですね。ちょうどそのころテレビでは『ザ・ベストテン』とか、いろいろな歌番組がやっていて、出演する歌手が「いまレコーディング中です」とか言いながら、スタジオの大きい機材の前で歌っていたりしたんですね。ああこういう現場で、自分もやってみたいなって。

佐武 かっこいいな~って。

阿部 そうなんです!

佐武 そんな興味が仕事につながっていったんですね。録音の技術は学校に行って勉強されたんですか?

阿部 一応はそうですね。高校を卒業した後、専門学校に通いました。

佐武 そこで勉強を。最初はやっぱり機械を覚えるところから始まるんですか?

阿部 そうです。……そうなんですが、機械の使い方を覚えるより前に入れてもらえるところ探さないといけないんです。スタジオに入れないとプロになれないわけですから。

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