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テクノロジー虎の穴 第6回

通信衛星、GPS、地球観測……私たちの生活を支える様々な宇宙の技術

松浦晋也氏に訊く、はやぶさ2と宇宙のテクノロジーのこれから

2014年12月17日 09時00分更新

文● 松野/ASCII.jp編集部

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 12月3日、小惑星探査機「はやぶさ2」が打ち上げに無事成功し、大きな話題となった。はやぶさ2のような宇宙探査機に使われるテクノロジーといえば、さぞ高度で科学の粋を集めたものなのだろう、と想像を膨らませる読者もいるかもしれないが、実際には必ずしもそうではないのだという。
今回は、『はやぶさ2の真実 どうなる日本の宇宙探査』を執筆したノンフィクションライターの松浦晋也氏に、はやぶさ2や日本の宇宙開発の現状、宇宙のテクノロジーの未来についてお話をうかがった。

私達が知らない、宇宙のテクノロジーとは?

探査機や衛星の搭載技術は必ずしも最先端ではない

――探査機や衛星に搭載される技術といえば、科学や工学の最先端というイメージがあります。

松浦 「宇宙のテクノロジーというのはけっこう厄介で、みんなが思っているようなものとは違うかもしれません。何よりも信頼性が求められるので、実は技術的には確実性の高い、古いものを使っていることがほとんどです。『はやぶさ2』のような探査機は開発に数年かかりますが、その時点で、可能な限り実際に宇宙で使って実証されたテクノロジーを用いることで、より確実な成果を上げようとするわけです。半導体なんかはその典型例ですね。今回はやぶさ2が搭載したメインカメラは解像度が1024×1024ピクセル(約100万画素)なんですよ。何故かというと、初代はやぶさに搭載していたカメラと同じ技術を使っているからです」

――画素数が高ければいいというものでもないですが、最近はスマートフォンのカメラでも、1000万画素を超えるものが出てきていますよね。

松浦 「それでも、きちんとキャリブレーションなどをやっていれば、科学的なデータが採れるんですよ。

打ち上げに成功したはやぶさ2と、H-IIAロケット26号機の内面図

 初代はやぶさのCPUは16bitですしね。30年くらい前の技術で動いてるわけです。ただ、それには放射線の問題も関係しています。宇宙空間には放射線が飛び交っていますが、これが半導体回路に当たると、電気的に0と1で記憶されている情報の数値がひっくり返って、暴走してしまう。これを『ビット反転』なんて言います。今のCPUはプロセスルールがどんどん小さくなっていて、小さければ小さいほど、反転が起こりやすくなってしまうんです。だから必ずしも、最新の微細で高性能なものを採用すればいいわけではないと。強い放射線を浴びる高度を飛ぶ衛星なんかは、わざと古いものを使ったりします」

――失敗が出来ないからこそ、確実性を重視するんですね。

松浦 「逆に言うと、本体よりも優先度の下がる、サブの小さな装備のほうがテクノロジー的に進んでいる場合があります。はやぶさ2は『DCAM3』という、インパクター(小惑星の表面にクレーターを作り、内部のサンプルを採取するために撃ち出す装置)を分離撮影するためのサブカメラを搭載していますが、あれは大体2000×2000ピクセル(400万画素)です。重要度が本体やメインカメラほど高くないため、新しいデバイスを利用しているんです。はやぶさ2が小惑星1999JU3にランデブーするまで、約4年間の長旅になりますが、その間の放射線による多少のドット落ちを考慮しても、必要なサイエンスデータは得られるだろうという判断がされたようですね。そこで技術が実証されれば、次の探査機にはメインで搭載できるかもしれない。

 技術的に凄いところと、そうでもないところが混在しているのが宇宙工学です。本当に凄いと言えるのは、宇宙空間のような未知の環境で確実に動くものを作る、システム工学的な面なのでしょうね」

(次ページ、「日本の宇宙開発は『経験不足』」に続く)

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