myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第36回
BMS・maimai――独自の生態系をもつ音ゲー動画の世界
現在ニコ動に投稿される動画の1割はmaimaiが占めている
2014年10月23日 18時00分更新
この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画やpixivの現在を紹介していきます。今回はゲームのなかでも独特の人気がある音ゲー関連の動画を調べてみました。連載一覧はこちら。
筆者紹介:myrmecoleon
明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2014』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。
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「音ゲー」ってなに?
音ゲーとはビデオゲームのジャンルの1つで、音楽やリズムに合わせてプレイヤーが操作をするゲームの総称です。
曲に合わせてキーをタイミングよくクリックするコナミの「beatmania」シリーズなどが有名で、他にダンスのように曲に合わせて足場を踏む「DDR」(ダンスダンスレボリューション)シリーズや、楽器を模したコントローラで演奏する「GUITARFREAKS」「drummania」(両者を合わせて「ギタドラ」と呼ばれる)などコナミの音ゲー「BEMANI」ブランドは音ゲーの代表といってよいでしょう。もちろんバンダイナムコゲームスの「太鼓の達人」、セガの「maimai」など各社で音ゲーを出しています。
一方で音楽という要素はアイドルなどのキャラクターと関連づいたモチーフと相性が非常に良く、「初音ミク-ProjectDIVA-」シリーズやアイドルマスターシリーズの「THE IDOLM@STER LIVE FOR YOU!」ほか、ラブライブ!の「スクフェス」(ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル)など、ニコ動の人気キャラクターに関するゲームでも音ゲーのシステムが採用されています。
家庭用ハードの音ゲーもありますが、音ゲーは楽器を模したものや独特のコントローラーを使うゲームが多く、アーケードゲームが目立つゲームジャンルとなっています。また近年は前述の「スクフェス」や「ポップンリズミン」「GROOVE COASTER」「Cytus」のようにスマホでプレイできる音ゲーも人気が高いです。
ゲームのプレイ動画も、音楽に関する動画も、ニコニコ動画では人気が高いジャンルですので、両方の要素を兼ね備える音ゲーは動画投稿向きの題材といえるかもしれません。
音ゲーに関してニコニコ動画では、プレイの動画、音ゲー曲を紹介する動画、フリーの音ゲー譜面の配布動画、音ゲー曲のMAD、アレンジ、演奏してみたなどがよく投稿されています。
音ゲーを扱う動画の統一的なタグはなく、「音ゲー」タグが比較的広く付けられていますが、基本的にはゲームタイトルに関するタグを付けることが一般的です。音ゲーのタイトルのタグは無数にありますので、今回は比較的よく投稿されているゲームタイトルを中心に下記の音ゲー関連タグ20件の動画を対象として調査しました。
今回調査対象とした音ゲー関連タグ20 | |||
---|---|---|---|
beatmania | BMS | DDR | jubeat |
maimai動画 | osu! | ProjectDIVAArcade | SDVX |
SOUND_VOLTEX | stepmania | ギタドラ | スクールアイドルフェスティバル |
スクフェス | バンブラDX | ポップン | 音ゲー |
音ゲーMAD | 初音ミク-ProjectDIVA- | 太鼓さん次郎 | 太鼓の達人 |
現在のニコ動投稿の1割を占める音ゲー動画「maimai動画」
今回対象となる音ゲー関連動画の総数は約42万4000、投稿者の総数は約3万3000名でした。ただしこの数字は「maimai動画」の影響が非常に大きくなっていますので、先に「maimai動画」タグをご紹介します。
「maimai動画」はセガが2012年よりリリースした音ゲー「maimai」の公式動画投稿機能を使用した動画に付けられるタグ。洗濯機のような独特の形状をした筐体にはニコニコ動画と連携してプレイした様子を投稿する機能があり、プレイ用アカウントとニコ動のアカウントを紐づければ、プレイした内容を自分の動画としてニコニコ動画に投稿することができます。
遊べる楽曲自体も、ボカロ曲を踊ってみたPVとともに遊べるなどニコニコ寄りになっており、明確にニコ動視聴者をターゲットに狙ってきた音ゲーと言えるでしょう。最近ではゆっくり実況機能なども追加されたようです。
手軽に動画が投稿できることから、稼働以来とてつもない数の動画が投稿されており、2012年スタートにも関わらず現在26万動画以上の投稿があります。これは同一ゲームシリーズに関するタグとしては「アイドルマスター」「東方」と並ぶ規模の投稿数です。
現在は月に1万5000前後が投稿され、毎月ニコニコ動画に投稿される動画の1割近くが「maimai動画」となっています。現在最も頻繁にプレイ動画が投稿されているゲームと言ってよいでしょう。
投稿者も非常に多く、これまで約1万2000人が動画を投稿しており、その多くがこれまで音ゲー関連の動画を投稿していない方でした。毎月の投稿者は3000人以上、500名前後の新規投稿者が増えています。
一方で、再生数はほとんど増えず再生数中央値は15と異常に小さいことからわかるように、動画としてはほとんど視聴されていない部類です。1万再生を超える動画も1万分の1以下の20件しかありません。動画投稿は現在1人1日1回までの投稿となっていますが、それでも投稿の勢いは止まらず、毎月の投稿者も増加しています。
ニコニコ動画での視聴という意味ではまだあまり成功していない印象がありますが、サービスとしては活用されており、独特の生態系をもったタグといえるでしょう。単純に動画の投稿数、投稿者数という意味では、「maimai動画」1つでそれまでの音ゲー動画全体の規模を塗り替えるほどの投稿量があります。
そうした意味で音ゲー動画の投稿者の増加には桁違いの影響を与えているタグですが、今回の調査ではノイズになりやすいため、「maimai動画」タグのみを付けている動画については以降の分析では除外します。
元タカラジェンヌで、踊ってみた投稿やアイマス好きでも知られる彩羽真矢氏によるmaimai動画唯一の10万再生動画。maimaiをプレイする姿さえ美しいと評判で、この後8月の「maimai LIVE 2014 ~洗濯祭~」にもゲスト出演している。 |
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