myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第38回
じつは再生・マイリス共に多い、カラオケ向け字幕付き動画
ニコ動をツールとして使う「ニコニコカラオケDB」の世界
2014年11月20日 18時00分更新
この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画やpixivの現在を紹介していきます。今回は「ニコニコカラオケDB」タグを調べてみました。連載一覧はこちら。
筆者紹介:myrmecoleon

明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2014』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。
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ニコニコカラオケDBとは?
「ニコニコカラオケDB」とはニコニコ動画のタグの1つで、いわゆるカラオケで流れる映像のように、楽曲に合わせて歌詞付きの映像が流れるようにした動画に付けられます。音声はオフボーカルのものが通常ですがオンボーカルの動画もあります。
もともとニコニコ動画で流行っている東方アレンジやボカロ曲がカラオケに配信されておらず歌えないという状況があったため、ニコニコ動画好きでカラオケをしたい有志がオフボーカルの音声に歌詞の映像をつけた動画を投稿、カラオケ店にPCなどを持ち込んで歌う、というようなことがニコ動初期から行なわれていました。こうした動画に付けられるタグが「ニコニコカラオケDB」です。
「ニコカラ」と略されることもあり、同様の動画は「ニコカラ」タグでもしばしば投稿されています。特に近年は「ニコニコカラオケDB」をつけずに「ニコカラ」タグだけで投稿されている傾向が強いようです。
ちなみに「ニコカラ」の略称は上記のようなニコニコ動画の曲をカラオケで歌う行為自体やそれを目的としたオフ会(ニコニコカラオケOFF)などを指す場合もあります。こうしたオフ会は2007年4月末に2chなどで話題となり連鎖的に各地で開催されて以降、継続的に開催されていました。こうした集まりからニコ動で人気の楽曲のカラオケ用動画の需要があり、「ニコニコカラオケDB」の動画が多数投稿されるようになっていきます。
当時開催された最初期のニコニコカラオケOFFの様子。歌っているのは人気の高かった「巫女みこナース」。すでにPCを持ち込んでニコ動の映像を見ながらカラオケが行われているのが分かる。他に当時のニコ動の人気曲を空耳調で歌ったり、元の歌をリクエストして遊戯王MADの歌詞で歌ったものなどが投稿されている。 |
近年では東方アレンジもボカロ曲も発表直後ではないもののカラオケに配信されるようになっていますが、「ニコニコカラオケDB」は未だに多数投稿されており、現在も持ち込みでのカラオケや、ニコニコ生放送での歌ってみた枠などで使用されています。
ニコ動の一般的な観賞目的の動画と異なり、「ニコニコカラオケDB」はツールとしてニコニコ動画に投稿されて使われている動画群と言えるでしょう。
「ニコニコカラオケDB」に関連するタグとしてはボカロ曲を専門とする「ボカロカラオケDB」やアニソンの「アニソンカラオケDB」、エロゲ曲の「エロゲカラオケDB」などがあります。多くは「ニコニコカラオケDB」と合わせてタグが付けられており(たとえば「ボカロカラオケDB」タグの動画の約9割は「ニコニコカラオケDB」がついている)、「ニコニコカラオケDB」が総合的なタグとなっています。
ただし東方アレンジ等の「東方ニコカラ」では3分の1程度しかこのタグは付いていないなど、楽曲の傾向によって違いはあるようです。
こうした特徴から、今回は「ニコニコカラオケDB」タグの動画について調査し、加えて関連するタグについて補って紹介していきます。
実は再生もマイリスも多い「ニコニコカラオケDB」動画
「ニコニコカラオケDB」タグの動画は現時点で約3万9300件が投稿されています。投稿者数は約3140名。1人あたりの動画投稿数が多いタグです。
2007年の初期から投稿されており、「組曲『ニコニコ動画』」などの初期の歌ってみたブームや初音ミクの発売があった2007年の夏頃から投稿が増加、2008年から2009年は月200件前後の「ニコニコカラオケDB」動画が投稿されていました。
しも氏のニコニコメドレーシリーズ「組曲『ニコニコ動画』」のカラオケ動画。投稿者のTOMO氏は「ニコニコカラオケBOX化計画」と称してこうしたカラオケ動画を作っており、これはその第7弾。この後この動画を使用した歌ってみた動画が多数投稿されるようになり、組曲歌ってみた動画の流行を牽引した動画。なお、氏の一連の動画は現在確認できるかぎりでタイトルに「【ニコカラ】」と入っている最古の例。また氏は当時カラオケ字幕動画の作り方を説明する講座動画も投稿している。 |
その後、ボカロ歌ってみた動画の増加からやや遅れて2010年の9月頃から急激に投稿が増え、以降2012年はじめまで増加が続きます。この時期は投稿者数とともに1人あたり投稿数も増加しており、後述するようにボカロ曲を中心にカラオケ動画の投稿が非常に活発でした。
2012年以降は投稿数は減少傾向です。ただしこの頃から「ニコカラ」タグでの投稿が増えており、「ニコニコカラオケDB」タグの投稿数の極端な下落はその影響があります。グラフでは「ニコニコカラオケDB」「ニコカラ」および主要タグ(「ボカロカラオケDB」「東方ニコカラ」「アニソンカラオケDB」「エロゲカラオケDB」)のいずれかのタグの付いた動画の投稿数も参考として載せています。
こうした「ニコニコカラオケDB」動画の傾向ですが、意外かもしれませんが、再生数・マイリスト登録数ともにニコ動の動画の中でも非常に高い傾向があり、中央値では再生数は1079と音楽系のタグとしてはとても高く、マイリスト登録数に至っては43と、「歌ってみた」や「VOCALOID」はもちろんどのカテゴリタグよりも高い値です。
12.5%の動画が1万再生を超えているなど、この傾向は一部だけでなく全体的によく再生されており、だいたいのボカロオリジナル曲よりも「ニコニコカラオケDB」動画の方が再生されやすい、と言えるでしょう。上位1.11%の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中と、投稿者毎の偏りも比較的小さいです。
これはカラオケ動画の「使われる動画」という性格上、繰り返し再生される傾向が強く、また自分が歌いたい曲をマイリスト登録するというような用途からマイリスされやすいのでしょう。

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