最新ユーザー事例探求 第34回
ビデオ会議で遠隔の医療機関同士の共同プロジェクトが円滑に
京大病院の臨床研究支援ネットワークを変えた「Avaya Scopia」
2014年06月16日 14時00分更新
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6月3日、日本アバイアは「アバイア・モバイル・コラボレーション・セミナー」を大阪で開催した。セミナーでは、西日本の大学病院や医療機関との班会議や打ち合わせにおいてアバイアのビデオ会議システム「Avaya Scopia」を活用している京都大学病院での事例が披露された。
クライアントソフトが無償利用可能なAvaya Scopia
Avaya Scopiaはマルチデバイスに対応したビデオ会議システムだ。ビデオ会議というと、会議室に専用端末を備え付け、メンバーが集まって実施するというイメージがあるが、最近はPCやモバイルデバイスをビデオ会議端末として利用するというパターンが増えている。Avaya Scopiaも、モバイル時代を前提としたビデオ会議システムの1つだ。
セミナー会場に用意されたAvaya Scopiaの製品群
Avaya Scopiaは、フルHDに対応する多地点接続装置(MCU)「Scopia Elite」を導入することで、専用端末やクライアントソフトを導入したPC、スマートフォン、タブレットから高品質なビデオ会議を利用できる。PCやモバイルデバイス(Android/iOS)向けのクライアントソフトが無償提供されるため、不特定の拠点においても、ビデオ会議を容易に導入できるのが最大のメリットとなっている。
また、受信側のネットワーク帯域や端末の再生能力によって再生解像度を選択できる「H.264 SVC(Scalable Video coding)」規格の採用により、ネットワークのパケットロスが発生する環境でも、安定したビデオ品質を実現する。資料の共有や会議の録画なども可能で、遠隔との会議や打ち合わせ、在宅勤務、BCP対策など、幅広い場面でコミュニケーションを促進する。
基礎研究から新たな医療の実現までを支援する
京大病院 臨床研究総合センター
このAvaya Scopiaを導入し、他の医療機関との密接な連携を実現しているのが、京都大学医学部附属病院(以下、京大病院)の臨床研究総合センターである。セミナーでは、京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター 角 栄里子氏が、センターの概要と導入までの経緯について講演した。
京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター 角 栄里子氏
通常、基礎研究から臨床応用までのプロセスは、膨大なリソースと経験を必要とするため、製薬企業・医療機器メーカーが管理することがほとんどだ。せっかく優れた研究結果が出ても、多くの大学は臨床応用を行なって、承認申請に行き着くまでのプロジェクトを管理できない。結局、数多くの基礎研究は放置され、知財を取得せずに論文として公表した段階で、製薬への道をあきらめることになる。
こうした現場の課題に対し、京大病院 臨床研究総合センターは医師自ら臨床応用を進め、製薬会社との開発にまで進めるよう支援している。角氏は、「薬剤の準備はどうしたらよいか? 製薬のための特許はどう取得すればいいのか? 規制当局との調整をどうすればいいのか、治験の管理のための手順書作成や品質管理などをサポートしています」と説明する。企業の受託に依存しない新規医療開発を推進し、すでに医薬品・医療機器など8件の医師主導治験の実績があるという。
一般的な医薬品開発の流れ
そして、京大病院 臨床研究総合センターのノウハウをネットワーク化によって、他の大学病院にまで拡大していこうというのが、2012年からスタートした「開花プロジェクト」だ。開花プロジェクトでは、中部、西日本を中心にした現在14(京大病院のぞく)の大学病院と京都大学が協力して臨床開発を行ない、優れた医薬品や医療機器をいち早く患者に届けるのを目的としている。こうした中、「当然のことながら、他の大学病院にも優れた先生や研究がいっぱいあります。でも、こうした大学では当センターのように基礎研究から臨床応用に持ち込むまでのノウハウがありません。この部分をサポートしたいと考えました」(角氏)とのことで、本来であれば埋もれてしまう基礎研究に光を当てていくわけだ。
中部・西日本の幅広い医療機関が参加した「開花プロジェクト」の概要
とはいえ、開花プロジェクトの提携先が西日本を中心とした広い範囲に拡がっていたため、コミュニケーションに大きな課題があった。「センター長や教授クラスを数人でも集めようと思ったら、会議は数ヶ月先になるので、全体会議の開催がきわめて困難でした。でも、日常的に話せる関係にならないと、臨床試験等で困っていることを相談したり、協力しあうことが難しいんです」(角氏)。
また、臨床試験の打ち合わせも大きな負担だった。現在、臨床試験自体はすでに病院単独で行なうことは少なく、他の医療機関と共同プロジェクトを立ち上げ、運営するのが一般的になっている。こうした中、治験や臨床試験の流れは、文章だけで説明するのが難しいため、各施設に直接出向いて説明する必要がある。しかし、関係機関が増えれば増えるほど、打ち合わせも増え、時間とコストがかかっていた。角氏によると、あるプロジェクトでの打ち合わせ回数は半年だけで34回におよんでいたという。「病院の業務終了後に説明することになるので、どうしても夜遅くになっていました」といった管理上の問題もあった。
(次ページ、他施設との連携を大幅に向上させたビデオ会議)

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