米国のISISが状況を報告
クレジットカードのリスクは盗難・紛失
小野寺氏につづいて、米国のキャリア3社(AT&T、Verizon、T-Mobile USA)が立ち上げたモバイルNFCのジョイントベンチャーであるISISでCEOを務めるMichael Abbott氏が登場し、米国の状況を語った。
同社は2010年11月の設立当時、Googleが「Google Wallet」でSprintと組んだことから、これに対抗するものとも位置づけられていた。ISISは長い準備期間の後、やっと2013年11月に全米で「ISIS Mobile Wallet」サービスを開始した。ユーザーはAndroidとiOSに対応するアプリをダウンロードしてクレジットカードなどを登録すれば、読取機のあるショップで決済を利用したり、クーポンを提示できる。
なぜモバイルで決済なのか? その背景について、Abbott氏は決済はパーソナルであること、クレジットカードは40年前からの技術であることを挙げる。特に無視できないのが盗難・紛失の数だ。
この5年間に米国では、なんと2億5000万枚を超える数のクレジットカードがなくなったのだという。コンシューマーもモバイルに期待している。安全な決済方法として、ICチップ&暗証番号(35%)に対して、携帯電話(65%)を選んだ人は2倍近い。また、個々のショップや小売店が提供するアプリを複数使い分けるのは面倒で、「1つのアプリでさまざまなサービスを利用したいと回答する人も65%いた」とニーズがあることを強調する。
これに対して、ISISのアプローチは、「コンシューマーによるコントロール」「参加する小売店のプライバシー尊重」「安全」「シンプル」となる。これを実現していくにあたり、オペレーター、OEM、決済サービス、POS端末メーカーらと共同でエコシステムを作っていく。
世界でNFCチップを搭載したスマートフォンの出荷台数は2013年に2億700万台に達しており、2014年には3億に達すると予想されている。読み取り機側では、新たに出荷されるもののうち95%がNFCに対応している。米国の上位100社の小売店のうち24社が対応の読取機の導入を始めており、VISA、MasterCard、Discover、American Expressの4社との提携により決済ネットワークもカバーした。「土台は揃った」と語る。
では、気になるユーザーの受け入れはどうか。これについてAbbott氏は、コカコーラの対応自販機、スムージーのJamba juiceのキャンペーンなどの例を見せながら、「毎月50%で増えている」と報告する。ISISユーザーは平均して月に6~7回利用しており、3分の2が新しいカードを追加したという。デバイス側では対応機種は50種以上あり、NFCに対応していないiPhoneでは専用カバーを用意することで補完する。
iPhoneがNFCになかなか対応せず、Google WalletもNFCが必須ではなくなるなど(関連記事)、モバイルNFCの動きは遅い。Abbott氏は「時間がかかる」と認めつつも、「コンシューマーはモバイルが生活を便利にシンプルにしてくれると期待している」と潜在性の高さを強調した。後半のパネルではKDDIの小野寺氏がFeliCaの状況と対比させながら、「ISISはオペレーター3社で構成されている。とても良い考えだと思う」とコメントした。

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