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イレギュラーを想定内でオペレーションする

JALのオペレーションコントロールセンターはまさに秘密基地!

2013年11月10日 12時00分更新

文● 藤山 哲人

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膨大な情報を処理するエキスパート
顧客サポートと運航管理

 ミッションディレクターの左に位置する顧客サポートは、遅延情報をいち早く外部に知らせるチームだ。空港カウンターにある大型ディスプレイの「遅延・欠航」の表示にはじまり、ホームページでのリアルタイムフライトインフォメーションの発信、また社内各部門への通達などもここで行なわれる。

顧客サポートチーム。空港のサインボードの遅延、欠航を表示したり、Webのフライト情報をリアルタイムに更新する。台風接近などでは、報道にリリースするのも役割。写真奥は整備機材運用チーム

出発カウンターのサインボードの欠航表示までOCCが行なっている

 さてOCCの右側は、おもにフライト中の飛行機との調整を行うセクションだ。大きくは国際線と国内線の運航管理に分かれており、国際線はアメリカ方面とヨーロッパ方面に分かれている。

 他チームはおもにコンピュータの操作が中心で、日英交じりの電話の会話が聞こえる程度だが、運航管理はOCCで一番騒々しいチーム。なぜなら日本全国をフライト中のパイロットからの無線をモニターしているためだ。

 パイロットと運航管理管が無線通信と各種のデータリンクを駆使して、現在の飛行機の状態や情報を収集、パイロットからのリクエストに答えたり、フライトの提案などを行なう。なお国際線の場合は地球の裏側まで届く特殊な電波帯の無線を使ったり、衛星電話回線を通じてやり取りをする。

飛行場の気象を専門に扱う

国内線の運航管理チーム。1人1台無線機を持っている

 また運航管理は、安全で快適なフライトに必要な情報を提供する、データセンターにもなっている。常に気象データの専任が、各空港の気象情報や上空の天気図、風向きを収集・予測しているだけではない。

 データリンクを経由して飛行機の位置情報と高度、そして揺れのレベルが刻一刻とOCCに送られるので、できるだけ揺れの少ない高度やルートをパイロットに提案(それを受けてパイロットは航空管制官にルートや高度の変更をリクエスト)したり、機内サービスの開始時刻などをアドバイスする。

飛行場の気象を専門に扱う

経済的、かつ気象が安定している
道のりをナビゲーションする航路支援

 エンルート(航路)支援は、飛行機のルート案内をするナビゲーションチームだ。空は自由に飛べるわけではなく、道路と同じで、決められた航路があり、電波標識間を決められた高度で飛ぶ必要がある。また交通量が多い太平洋上では、何航路もあり、航路によっては追い風や向かい風になる場合があり、好条件の航路は各社で取り合いになる。

 

国内線の運航状況を一覧できるシステム。横軸が時間で縦軸が機体となっていて、色がついている部分がフライトとなる。システムが遅れを検知すると「DLY」マークが表示される

遅延が発生した場合に情報を共有する掲示板システム。ワークフローも表示される

飛行機のメンテナンス内容などを管理するシステム(右下)

ヨーロッパ方面の気圧配置図(地上)

TAFやMETARと呼ばれる飛行場の気象データリンクの内容。風向、視程(何km先まで見えるか)、雲の量と高度、気温、湿度、気圧が記されている。機内アナウンスで到着地の気象をお知らせしている場合は、たいていこのデータを使っている。到着時の気象アナウンスは、別のデータ

上空の気圧配置図。飛行中は、地上の気圧配置図は役にたたない

上空の風向と風力図。向かい風は燃費が悪くなるので、できるだけ追い風に乗る

気圧配置図と飛行機とのデータリンクで送られてきた揺れの情報。これを元に後発機のルートや高度を決めたり、機内サービスのタイミングを見計らう。左は地図上で見たイメージで、右は高度で縦割りにしたイメージ

飛行機とデータリンクして位置や高度、速度などが把握できる。緑で表示されている○は、緊急時に着陸できる飛行場を示している

 エンルート支援は飛行機の最適な(より経済的で有利、そして気象が安定している)道のりをナビゲーションするというわけだ。また軍事演習やロケットの打ち上げ、大気圏再突入などにより、エンルートが一時通行止めになる場合もある。こんな場合もエンルート支援の出番となる。

 OCCはこのように情報の収集・分析・判断を各チームのスペシャリストが行ない、スケジュール統制はこれを元にイレギュラーを最小限に押さえ、今後発生するイレギュラーを想定、以降は想定内のオペレーションとして対応できるように、調整・コマンドを出すのだ。

 それを総指揮するのがミッションディレクターであり、われわれがフライトインフォメーションとして見聞きできる状態に発信するのが、顧客サポートチームというわけだ。

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