我々を目的地まで高速で連れて行ってくれる飛行機。当たり前のように乗って、当たり前のように飛び立ち、ものすごい速度で飛び、当たり前のように着陸する鉄の塊。
普段から何気なく利用しているが、飛び立つ時ってどうしているの? 旋回ってどうやるの? 着陸するときは? ブレーキってあるの? など、ふと考えてみるとなにも知らなかった。
というわけで、日本航空(以下、JAL)に協力をあおぎ、ボーイング777-200の姿勢を制御するメカの動きを取材したので、その模様をお伝えしよう。
エンジンは、飛ぶときだけ必要なわけじゃない!
飛行機の推進力を生み出すためのエンジン。これは飛行機が飛ぶときだけに使われていると思うだろうが、飛行機には地上を遡航するための機能はないため、地上を移動するときにも使用している。
さらに、着陸の際にもエンジンは使用される。エンジンのカウルを開いてスラストリバーサーという機構を作動させることで、通常とは逆の空気の流れを作り出しエアブレーキをかけるからだ。
航空機の逆噴射には2つのタイプがある。リバース・アイドルとフル・リバースだ。前者は、着陸時のエンジンの推力の流れを斜め前方に変えること。後者は、リバース・アイドルに加え、ブレーキの効果を強めるためにエンジンの推力を着陸後に一時的にあげて、斜め前方に出る空気の強さを強めることだ。
フル・リバースは、雨や雪などで路面がぬれたり、凍結しているときや、滑走路が短い空港などでは安全を確保するために使用するが、騒音といった環境問題対策などを考慮して、通常は使わないようにしている。
離陸時は主翼を広げて飛び立ちやすく!
エンジンが生み出した前に進む推進力を、揚力に変えるのが飛行機の主翼だ。揚力と言われてもピンとこないかもしれないが、小さい頃に車から手を水平に出すと、上に浮くような感覚を感じたことがあるだろう。
これは向かい風を受けて窓から出された手が揚力を得て、上に上がろうとする力が働いた結果。とはいえ人間の手や腕では人が飛ぶほどの揚力は得られないため、上に引っ張られたように感じるだけだが、飛行機はこの揚力を非常に大きくすることで、大空へと飛び立つのだ。
だが、主翼はそのままの形では、飛び立つのに必要な揚力を効率よく得られない。そこで、離陸時は揚力を得やすいように変形する。主翼の付近の座席に座ったことがある人なら、主翼が前後に大きくせり出している姿を見たことがあるだろう。その機構の呼び方は、前側がスラット、後ろ側がフラップと呼ばれている。ちなみにエアバス社では、両方ともフラップと呼んでいる。
着陸する際にも、スラットとフラップがせり出すが、安全に着陸するために、着陸前、飛行機は速度を落とす。速度を落とすと揚力が下がる。そこで、スラットとフラップを広げて翼の面積を大きくして、速度を落としても揚力が確保できるようにしている。
ちなみに、もともと設計の段階で、翼をスラットとフラップを広げた形にしないのは、空気抵抗が増し燃費が著しく悪くなるため。飛行機は、最も燃費がよくなるように、その状態によって翼の形を変化させているのだ。
さて、揚力を得た飛行機は、上昇をするために機首を上げなくてはいけない。その際に使用するのが、飛行機の後ろにある小さな翼、水平尾翼にあるエレベーター(昇降舵)と呼ばれる装置だ。
エレベーターが上下に動くことで、機体の向きは上を向いたり下を向いたりする。これは飛行中の高度の調整や着陸に向けて降下をする際にも使用される。
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