たった2時間の取材中にも
エンジントラブルと滑走路閉鎖に遭遇
天気もよく、とくに何もない日でもOCCにはイレギュラーケースが舞い込んでくる。2時間の取材時間中、筆者が取材の傍らモニターしている無線などを聞いている時点で飛び込んできたのは2件。
1件は機材トラブル。ミッションディレクターの桑野氏によれば、“どんなに小さな不具合でも完璧に修理しないと飛ばさないようにしている”ため、結果的に機材トラブルによる代替機手配のミッションが多くなるという。
もう1件は、鳥が飛行機に衝突する(おもにエンジンに吸い込まれる)、バードストライクと呼ばれるトラブルが、他社の飛行機で起きたことによる滑走路の閉鎖だ。飛行機自体はバードストライクを前提に設計されているので、安全運航に差し支えない。しかし滑走路は安全確認と、場合によっては鳥を追い払うために滑走路を閉鎖するため、一時的に離着陸ができなくなる。
ドラマや映画だけかと思っていたが、フライト中の病人の発生も多いという。だいたい月に1度ほど対応することがあり、病状によっては病院がある最寄りの空港に緊急着陸させるという。
われわれに一番身近なのは、台風が接近すると前日のニュースで流れる「日本航空は○○便、全日空は○○便の欠航が決まっています」。アレがOCCのミッションだという。
つまり欠航便の本数を最終的に判断するのがOCCのミッションディレクターで、それを報道各社に流すのが顧客サポートチームというわけだ。
ただこの本数を発表するのは、胃が痛む思いらしい。なぜなら他社との差が開いていると、「本当に台風が来る前日に、これだけの便を欠航すると決定していいものだろうか。もし、台風が逸れてしまったら……」との思いがあるためという。
先日の台風18号では、翌日9時~15時のフライトのうち150便を欠航すると報道に伝えたところ、他社とかなり差があったというのだ。調べてみたところその差100便。確かに大きい。
そして運命の翌日。実際に欠航したのは、両社とも200便にまで増えた。「空港に足を運んでもらい欠航を知って帰るということをお客様にさせたくない」というOCCの判断が、結果として正しかったことになる。もう1社の台風当日の旅客対応は、推して知るべしといったところだろう。
このようにJALのオペレーションコントロールセンターは、ほとんど表舞台に出ることはないが24時間365日稼動している。JALの安全と安心、そして定時運航による快適なフライトを提供するために、欠かすことのできないセクションなのだ。それはもう会社組織というよりは、機体やコンピュータシステムのように、JALのインフラストラクチャーとなっている。