飛行機の定時運航を
妨げる要因はこんなに多い!
天気がよく、機体の調子もバッチリで、搭乗客に何のトラブルもなければ、定時に飛行機を飛ばすのは簡単。しかし冒頭で紹介したとおり、定時運航できるほうが珍しいと言った方がいいのが飛行機だ。なぜなら、遅れる原因を挙げたらキリがない。
- 台風が来れば遅れる
- 雪が降れば遅れる
- 搭乗客がこないと遅れる
- 搭乗客にトラブルがあると遅れる
- 荷物に問題があると遅れる
- 離着陸が集中する時間帯は遅れる
これだけならまだいい。飛行機が遅れると、どうなるか?
- 代替機を用意して遅れをカバー
- 代替機の代替機は?
- 機種変更すると旅客があふれる?
- 空いているパイロットがいる?
- その機種と路線の免許を持ったパイロット?
- 客室乗務員はそろう?
- 機体の定期点検の制限飛行時間をオーバーしない?
- 遅れで空港に人が溢れかえらない?
こうしてたった1便でも遅れが出て放置しておくと、雪ダルマ式に遅れやトラブルなどのイレギュラーが重大化する。そして遅れは欠航に発展してしまうのだ。
プログラマーの読者は痛感、っつーか共感してもらえると思うが、ほとんど通るとこのサブルーチン1個に1バイトの間違えがあると、なんかシステムの調子が悪くなり始めて、ストールしたり、ブルーバックが表示されたりするアレだ。
OCCのミッションは、「飛行機を定時に飛ばすこと」と簡単にかけるが、それには先々に起こりうるイレギュラーを予測・予防し、さまざまな条件をクリアにするとともに、クリアするためにネゴシエーションや各所にコマンドを出すのだ。まさにそれはウォッチドッグ※そのもの。
つまりOCCは、入ったイレギュラーケースを、各セクションにコマンドを出しレギュラーケースとして処理する復旧請負人なのだ。
※ウォッチドッグ:アプリケーションソフトが正常に動作しているかどうかを監視・判断・処理するシステムやデバイス。Windowsのタスクマネージャーで「応答していません」と表示されるアプリはウォッチドッグが判断している。たまに処理が遅いだけで、誤認するのがWindows。
フライトに関する情報を一元管理
各セクションのスペシャリスト集団が対応策を練る
OCCは運航の遅れやトラブルへの対応など、さまざまなイレギュラーを処理するため、多様なスペシャリストで構成されている。その要素は組織図として見るより、部屋のレイアウトを見ると分かりやすいだろう。
まずOCCの最高責任者、つまりJALとして安全かつ定時運航をするための最終決断を行なうのが、左下にいるミッションディレクターだ。通常は1人体制だが、台風などで遅延が見込まれる場合は2人体制でディレクションする。
ミッションディレクターの前には、スケジュール統制チームがあり、気象や機材、運航状況など各種のモニタリングができるさまざまな社内システムを見張っている。遅延の予測から、遅延が発生した場合のリカバリー、各種イレギュラーに対する対応を行なう。いわば指揮官が集う作戦司令室だ。
スケジュール統制を囲むように配置されているのは、運航乗務員・客室乗務員スケジュール管理、クルーワーク、整備機材運用チーム。
乗務員のスケジュール管理でとくに大変なのは、パイロットの手配だろう。飛行機を操縦するためには、機種ごとの運転免許が必要。そのうえ、初めて飛ぶ路線は、それぞれの空港要件に関わる知識付与が必要とされている。つまり、羽田-福岡をボーイング787で飛べるライセンスを持っていても、同じ787で羽田-千歳を飛ぶ場合は、千歳の空港知識がないと飛行機を飛ばすことはできない。 しかも安全運航のために一日の乗務時間が法律で決められているので、それを超過しないという条件もつく。
そこで免許の情報と勤務状況、待機状態などを管理するシステムを使って、交代のパイロットを探し出す。パイロットだけでは飛行機を飛ばせないので、同様に客室乗務員のチームも組まなければならない。
整備機材運用チームは、777や787と言ったように機種ごとの担当者が配置され、旅客の積み残しが発生しない、代替機をアサインする。ただそんなに余剰機を持っているわけでもないので、時にはすでにフライト中の機体を呼び戻したりすることもあるという。
さらに機体には、安全運航のためいくつかの法定点検の飛行時間があり、飛行中に飛行時間を越えないという条件もつく。
クルーワークは、地方への最終便に搭乗した乗務員の宿泊先などを手配する。普通の会社では個々に予約するホテルだが、乗務員が多いうえ、イベントが開催されるなどで、空港周辺のホテルに泊まれず、クルーが路頭に迷わないようにするのがミッションだ。