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ハイパースケールデータセンターを実現する次世代のサーバー&ストレージ 第1回

大容量・高負荷を前提としたITインフラの姿とは?

HPCとビッグデータは融合!ハイパースケールなインフラへ

2013年08月29日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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ITインフラのデータセンターへの移行が進み、集積密度が高まってくると共に、省エネ性能のみならず、処理性能と拡張性も重視されるようになった。ユーザーのデータが大容量化し、高い処理能力が求められるようになってきたからだ。ここではハイパースケール時代のデータセンターについて考えてみる。

企業のビッグデータ化はもはや待ったなし

 ITのインフラに大きな変化が訪れている。企業の持つデータ量が爆発的な勢いで増え、「もっと大容量に」というニーズを満たす必要があるだけではなく、大容量のデータを「もっとスピーディに」さばく必要が出てきているのだ。

 データ量の増大に関しては、もはや説明は不要だろう。従来、企業が抱えていたデータは、業務システムやグループウェア、メールシステムなどのデータベースがメインであった。データベースに格納されたデータは構造型データとも言われるテキストや数値が中心で、予想の範囲での容量増加でとどまっていたといえよう。

 しかし、2000年以降、画像やビデオなどのメディアデータが大幅に増加。特にビデオに関しては、インターネットのブロードバンド化で配信のニーズが高まり、今後ますます増えると見込まれる。企業の情報システム部から見ても、ファイルサーバーやメールサーバーの容量不足、データ保護のためのバックアップや利活用のためのコピーデータの管理は顕著な問題となってくるはずだ。

情報流通インデックスの計量結果では情報流通量は大幅に拡大しているが、消費量はあまり変わっていない(総務省調べ http://www.soumu.go.jp/main_content/000124276.pdf)

 また、従来廃棄していたログや業務由来のデータなどを解析し、ビジネスに活かそうという「ビッグデータ」のソリューションが台頭してきたことで、データはますます増える傾向にある。ビッグデータといえば、もともとはAmazonのレコメンデーションエンジンやGoogleのHadoop活用などの事例を思い浮かべるが、Webビジネスを展開する企業での導入も進んでいる。商用製品が洗練されつつあり、ビッグデータ解析のインフラ自体をクラウド上に展開するサービスが増えてきたことで、今後はより裾野が広がると思われる。

 このように、業務の現場で利用するデータの種類が増えてきたこと、そして今まで捨てていたデータをビジネスで活用するようになったことが相まって、ビッグデータ化は今までのようなWebジャイアンツのみのものではなくなってきた。“企業のビッグデータ化”が進んでいるわけだ。

容量だけではなく処理性能も重要

 ビッグデータ化が進むと、まず考えなければならないのは、大容量を前提としたストレージ環境だ。増え続けるデータに関しては、ノンストップで容量を増やせるスケールアウト型のストレージが必要になるし、バックアップやデータ保護も同時に検討しなければならない。その一方で、大容量データの処理能力の底上げも必要になる。今までビッグデータというと、とかく容量面での拡張性が話題にされていたが、処理能力に関しても高い拡張性が重要になってくる。

 もとより分散処理を前提に、高い処理能力を極限まで求めたのが、ご存じHPC(High Performance Computing)の分野だ。HPCとビッグデータの分野が融合し、今までとレベルの異なるハイパースケールなインフラとして認知されることになるだろう。

HPCとビッグデータ分野は融合し、ハイパースケールインフラの領域に

 重要なのは、こうしたハイパースケールなインフラがよりコモディティ化していくという流れだ。HDDをはじめとする記憶媒体の単価は毎年のように下落し、処理能力に関してはマルチコア、メニーコアCPU、GPGPUの普及やHadoopのような分散処理基盤の充実により、HPCのコモディティ化が進んでいく。この結果、調査や研究開発にコストをかけられる大企業じゃなくても、こうしたハイパースケールなインフラを使い、商品開発を実現したり、新しいビジネスを立ち上げることが可能になるのだ。

 そして、ハイパースケールなインフラの苗床になるのは、もちろん国内に次々と登場してきた最新データセンターだ。2009年頃のグリーンITとクラウドコンピューティングの勃興、2011年の東日本大震災、Amazon Web Serviceの国内データセンター開設などを経て、国内には省エネや耐震性、集積密度を意識した最新データセンターが次々と作られてきた。こうした最新データセンターに従来と異なるレベルのコンピューティングパワーとビッグデータが蓄積されることで、日本のITを大きく変わっていくはずだ。

 本特集では、こうしたハイパースケールなデータセンターを支える次世代のサーバーやストレージを紹介する。

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