データダイレクトネットワークス(以下、DDN)は、HPC(High Performance Computing)向けストレージを展開しているベンダー。HPC分野では名の知れた存在だが、今後はビッグデータの分野に最適化した製品を展開していくという。
DDNが考えたHPCとビッグデータとの交差点
長らくHPC向けストレージを展開しているDDNの設立は1998年にさかのぼる。会社設立から3年かけて作った製品のファーストカスタマーはNASAで、以降HPCクラスター特有のカスタマイズされたストレージを提供してきたという。米DDN CEOのアレックス・ボウザリ氏は、HPC向けのストレージについて「数百、数千というCPUで並列処理を行ない、それぞれI/Oが並列に存在する。大変なのは、クラスターやCPUの数にあわせ、計算速度をスケールさせなければならない点だ」と語る。こうしたHPCの要件を前提に作られた同社のMassive Scalable Storageは、競合他社の追従を許さないスケーラビリティと性能を誇るという。
この結果、DDNのHPC向けストレージは、天候のシミレーション、理論宇宙の発見、ゲノム解析、ハイテク工業機器の製造など幅広い分野で用いられている。現在でもトップ100のHPCシステムのうち、60はDDNのストレージを採用しているという。
しかし、昨今のDDNはビッグデータやクラウドの台頭にあわせ、舵を大きく切りつつある。ビッグデータの台頭で、企業システムで用いられてきたトランザクション中心のデータアクセスだけではなく、Hadoopのような分散処理を前提としてきたデータアクセスも増加している。また、オンプレミスだけではなく、大量のユーザーがアクセスするクラウド向けのストレージも注目されるようになった。
これに対してDDNではこうしたニーズを満たすスケールアウト性能を実現すべく開発されたSFA(Storage Fusion Architecture)というソフトウェアをベースにしたストレージ製品を提供している。また、スケールアウトNASやオブジェクトストレージなどの製品を次々とリリースしている。
ボウザリ氏は、「今のビッグデータはHPC市場が拡大したものだ。インターネットでイメージやビデオが拡大し、SNSが普及し、マシンがデータをさまざまなデータをはき出すようになった。一般企業も従来のHPCのようなデータ解析を行なうようになった。HPCからビッグデータへの移行は、われわれにとって自然な進化だ」と述べる。増え続けるデータやビジネスのグローバル化、なによりデータ主導型ITの進捗とともに、DDNが培ってきたHPCストレージの技術が活用できる時代になってきたというわけだ。
ストレージ内のコンピューティングを推進
DDNが目指すのは、単なるデータの保管庫としてストレージではない。ボウザリ氏は、「長期的にはデータ取り込み(Ingest)や処理(Process)、保存(Store)、配布(Distribute)をすべて単一プラットフォームで実現する計画」と、同社のビッグデータ戦略を説明する。まず、取り込みに関しては、EthernetやFC、InfiniBandなど幅広いインターフェイスを用意し、配布に関してはHTTP経由でデータを入出力できる「WOS」というオブジェクトストレージ製品を提供する。
特に注目したいのが、処理(Process)での取り組みになるストレージ内でのコンピューティングだ。「ストレージのCPUを用いて、データ処理の一部を肩代わりさせる。I/O要件が厳しい場合は、データとCPUが近い方が遅延が少なくなるからだ」(ボウザリ氏)という。
こうした製品の拡充もあり、DDNは市場でもビッグデータのプレイヤーとして認知されつつある。日本法人であるデータダイレクト・ネットワークス・ジャパンで代表取締役社長を務めるロバート・トリンドル氏も、「私が入社した5年前にはブロック系ストレージしかありませんでした。最近、CIOに向けて行なわれたビッグデータ関連の調査では、注目すべきハードウェアサプライヤーとして、IBMに次いでDDNが挙げられたんです」と驚きを隠さない。日本では、HPC分野ですでに実績を持っているが、今後はビッグデータ分野での販売パートナーを拡充していくという。
