百家争鳴!ビッグデータの価値を探る 第14回
トレジャーデータの太田CTO、ほぼ1万字&無加工インタビュー
“シリコンバレーの技術者集団”ではトレジャーデータを見誤る
2013年07月03日 07時30分更新
誰を雇わなくても、なにも考えなくても、データが溜まる
TECH 大谷:今後の方向性を教えてください。まずは製品について。
TD 太田:製品に関しては、とにかくフルスタックを目指します。BIのバンドルやテンプレートの提供も含めて、ログコレクター入れて、データをすぐに解析を始められるという環境を目指します。要は「誰も雇わなくてよくて、なにも考えなくてよくて、勝手にデータが溜まる」という環境です。これに向けて、製品を作っていきます。
では、どんな機能が必要なのかというのはよく聞かれるのですが、多くのお客さんが必要だったら、実装するし、そうでなければ作りません。今どきの言葉で言えば“Lean"な開発ですね。クラウドなので、バージョンアップはしやすいですし。
TECH 大谷:ビジネス面での方向性はどうですか?
TD 太田:シリコンバレーでもわりとエンジニアの空洞化みたいなことが進んでいるのですが、アメリカのすごいところはこの空洞を移民や海外の人が補っているところです。350人中、100人がビジネスマンで、開発は東欧でやっているなんて、けっこうざらです。というのも、スタートアップにとって見れば、場所を問わず、とにかくスピーディに市場を穫りに行くのが重要だからです。
私たちも、現在網にかかった魚は全部穫るような勢いで、案件数を増やしてきたのですが、せっかくファウンダーが日本人なので、縄張りみたいなものを持っておいた方がよいなと。そこで、他社が入る前に市場を穫りに行こうと、先日日本法人を設立したんです。
日本法人の場所も、渋谷のヒカリエや六本木ヒルズではなく、東京駅の前の丸ビル。このあたりにいる日本の誇るグローバル企業に認めてもらって、攻めの投資で使ってもらいたいと思っています。
これまではややギーク臭を出し過ぎた(笑)
TECH 大谷:こうして話を聞いていると、ビジネス戦略面でもなかなか長けているように思えます。「シリコンバレーの技術者集団」というのは、トレジャーデータの1面を捉えただけのような気もしますね。
TD 太田:それは、われわれがギーク臭を出し過ぎたからだと思いますよ(笑)。古橋も、太田もデベロッパーマーケットではそれなりに知られているので、開発者をレバレッジしたかったというのもあります。ですから、ある種意図的に「技術者集団」で打ち出したんですけど、これに関してはすでに知っていただいているという認識です。正直、シリコンバレーで起業している日本人っていますし、それだけでは珍しくない。
先ほども話したようにFluentdはけっこう使われるので、太田が行くと、エンジニアの方はけっこう歓迎してくれるんですけど、上司の方とかはあまり知らないんですよ。ビジネス面での文脈に強い人に知名度がないです。今回の取材のように、ビジネス面にフォーカスしてもらえるのはうれしいです。
TECH 大谷:そういう意味では、トレジャーデータのサービスを会社のどんな人が買ってくれるのか?というのは今後の大きなテーマですね。
TD 太田:セールスフォースCEOのマーク・ベニオフとかがよく言っているのは、最近米国ではCIOの権限が下がっているという話です。ITはもはやコストにしかならなくなっているのだと。一方、ほとんどの会社はブランドを売りたい。コカコーラは清涼飲料水ではなくて、結局ブランドを売っているんですよ。だから、ブランドとセールスがあれば、本当はITなんてなくても、ビジネスは動かせると考えている会社は世界でも多いはずなんです。こういう会社ではCMO(Chief Marketing Officer)のバジェットがとても大きくなって、CIOの地位は相対的に落ちています。ある意味効率化が進んだということだし、バイヤーが変わったともいえます。
こうなると、私たちのサービスを誰が買うのかがなかなか読みにくくなります。今までのようにCIOやCTOになるのか、この時期だけマーケット解析したいというCMOなのか、もっとデータサイエンティストに近い人なのか、あるいは運用を楽にしたい人なのか。ただ、その黄金律がわかった段階で、われわれの会社はあと10倍成長できるようになると思いますよ。
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