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BtoB領域、法人営業やコンタクトセンターの現場にもCDPの対象領域を拡大

トレジャーデータ、CDPの“Beyond Marketing”を掲げ2製品をリリース

2021年09月17日 12時00分更新

文● 五味明子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 トレジャーデータは2021年9月14日、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の新プロダクトとして、営業業務に特化した「Treasure Data CDP for Sales」およびコンタクトセンター業務に特化した「Treasure Data CDP for Contact Center(CC)」を提供開始した。

 同日の製品発表会では6月30日付で米Treasure DataのCEOに就任した創業メンバーの太田一樹氏がビデオメッセージで登場。「Treasure Dataは創業から10年が経過し、世界中に500名の社員を抱え、約450社の顧客に利用されるCDPのグローバルブランドへと成長した。今後はマーケティング領域での利用がメインだったCDPを“Beyond Marketing”、マーケティングの垣根を超え、さまざまな業務で使えるプロダクトだという世界観を示していきたい」と語り、新経営体制のもとでCDPビジネスのさらなる拡大を図る姿勢を示した。

Beyond Marketingではマーケティング以外の顧客接点で生じるさまざまなデータをリアルタイムに統合し、データを基軸にした業務の全体最適化を図ることを狙う

米Treasure Data CEOに就任した創業メンバーの太田一樹氏、トレジャーデータ 代表取締役社長の三浦喬氏

法人営業向け、コンタクトセンター向けのCDP新プロダクト

今回発表された2つのプロダクトの概要は以下のとおりだ。

●Treasure Data CDP for Sales
 業種/業界を問わない、法人営業/マーケティング部門向けのソリューション。Webサイト閲覧履歴やセミナー参加、商談/打ち合わせの記録など、顧客ごとの各種データを企業アカウント単位で結合し、顧客企業と担当者を包括的に管理/可視化。さらにAIで受注確度の予測などを行うことで顧客対応の最適化や効率化を実現し、インサイドセールスやフィールドセールスなど法人営業の高度化を図る。

法人営業に特化した「Treasure Data CDP for Sales」の概要。顧客個人のデータと企業データをひもづけ、営業データの包括的な可視化と管理、さらにAIによる受注確度の予測までを一気通貫で行う

●Treasure Data CDP for Contact Center
 コンタクトセンター/コールセンターに顧客情報を集約してリアルタイムな顧客対応を支援し、顧客体験を向上させるソリューション。店舗やECサイトでの購買データ、アプリ閲覧データ、サービス/機器利用データなどの多様な顧客データをコンタクトセンターのオペレータがリアルタイムで参照できる。また自然言語処理によるVOC(顧客の声)の分析、機械学習によるLTV(顧客生涯価値)や解約率の予測、データに基づくレコメンデーションやオペレータが次に取るべきアクションの提示なども可能で、コンタクトセンターを“すべての顧客接点の司令塔”として機能させることが可能に。

社内にサイロ化して散在するさまざまな顧客接点を横断したデータをコンタクトセンターに集約し、顧客のプロファイリングやオペレータが次に取るべきアクションを示唆する「Treasure Data CDP for Contact Center」の概要

 両プロダクトとも「BtoCで使われていたCDPデータをBtoBに」「サイロ化されていた各種顧客データを統合/連携」「AI/機械学習による予測を活用して業務を最適化/効率化」という点で共通している。説明を行ったトレジャーデータ 代表取締役社長の三浦喬氏は「技術的にも法的にもプライバシーに配慮した規制が今後強化される以上、ターゲティング広告や第三者データ利用などが難しくなることから、顧客とのエンゲージメント強化が期待できるCDPの役割はますます大きくなる」とした。

 「日本ではこれまで、セールスやコンタクトセンターなど顧客との接点が非常に大きい部分でのデータドリブンがあまり進んでいなかった。CDPはこれまでマーケティング中心で使われてきたが、最上の顧客体験を提供するならCDPの活用をマーケティングだけに留めるべきではない。今回の新製品は、太田(CEO)が強調してきたCDPの“Beyond Marketing”の実践である」(三浦氏)

 なお、両プロダクトともに「今後3年で約100社の導入をめざしていく」(三浦氏)という。

「マーケティング以外でも業務デジタル化の動き」国内でも変化のきざし

 今回リリースされた2つのプロダクトのうち、CDP for Salesに関してはソフトバンクとUSEN ICT Solutionsが先行導入している。

 ソフトバンクではコロナ禍で初のオンライン開催となったカンファレンス「Softbank World 2020」においてCDP for Salesを導入、総視聴数11万9000人にのぼるオンライン参加者の行動を可視化し、約3000人が所属する法人向け営業部門でデータを活用、データドリブンな顧客アプローチを営業活動で実現している。またUSEN ICT Solutionsでは“従来型営業のDX化”を部門を超えて実現するためにCDP for Salesを導入、BIで営業活動全体を可視化し、業種別シナリオメール施策やリサイクルリード活性化施策などを行った。これにより営業粗利155%、受注率128%、受注までの営業稼働時間を1/3にするなど大きな成果を上げている。

CDP for Salesを活用したソフトバンクの事例。10万人を超えるオンラインカンファレンス参加者のデータを可視化し、セッション視聴や展示ブース入場などのデータと企業データをひもづけ、約3000人の営業部員がインサイドセールスなどに活用

CDP for Salesを活用したUSEN ICT Solutionsの事例。マーケティングデータをもとにした中長期のナーチャリングや営業全体で取り組むリード活性化を実現し、粗利や受注率、稼働時間短縮で大きな成果を上げる

 こうした先行事例に限らず、「マーケティング以外でも業務をデジタル化しようとする動きは日本でもたしかに起こり始めている」と三浦氏は日本企業のデータ活用に対する変化のきざしを指摘する。今回の2製品のリリースはそうした国内企業のデータに対する意識の変化と、太田CEOが提唱するCDPの“Beyond Marketing”という構想が、経営体制の一新という良いタイミングで具現化したものだといえるだろう。

 また、Treasure Dataは「ここ2年ほど、リアルタイムでのデータ連携にフォーカスした開発を続けてきた」(三浦氏)結果として、とくにAIによる予測精度の向上と、競合製品を含むサードパーティシステムとの連携を実現するコネクタの拡充がめざましい。こうした機能面での優位性も今後の“Beyond Marketing”戦略において大きなプラス材料として働くとみられる。

 今後のCDP製品のリリースについて三浦氏は「今回の2製品のほかにも、すでに4つくらいのプロダクトがロードマップに上がっている。早ければ年内に、遅くても年度内にはそのいくつかを公開できるはず」と展望を語っている。国内CDP市場では41.7%という圧倒的なシェアを誇るトレジャーデータだが、そのプレゼンスをさらに確固たるものにし、ひいてはCDP市場全体を拡大していくために、“Beyond Marketing”の本格展開に動き出す。

国内CDP市場では圧倒的なシェアを獲得、今後はアジア市場の拡大やSMB市場への進出などCDP市場そのものの拡大にも注力するという

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