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百家争鳴!ビッグデータの価値を探る 第11回

NRIコンサルタントが語るIT業界とビッグデータ、クラウドとの関係

「データ」をビジネスにしないとIT業界では生き残れない

2012年10月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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2012年最大のバズワードとも呼べる「ビッグデータ」を、過去のデータ解析ブームや電子化・自動化などの業界動向から、実に美しく明確に説明してくれたのが、野村総合研究所(NRI)の鈴木良介氏だ。ビッグデータにまつわる素朴な疑問を同氏にぶつけてみた。

ビジネスでビッグデータが注目される理由

 今回は、インタビューを読む前にぜひ「EMC Private Conference」での鈴木氏の講演レポート(「ビッグデータを使うWeb事業者が外食産業に進出したら?」)を読んでいただきたい。この講演には、5月に掲出した特集でビッグデータとはなにかを聞き回った私にとって、ある意味「天啓」ともいえるようなヒントが数多く詰まっていた。

 特に今まで「ビッグデータ=GoogleやAmazonが使っているWebログやSNS」と捉えていた私にとって、「データはビッグな必要はなく、死蔵していた業務付随のデータを十分活用できる」という示唆は大きかった。Hadoopのような技術的なブレイクスルーを中心に考えていたビッグデータの見方は大きく変わり、ビジネスでなぜビッグデータが注目を集めるのか、霧が晴れるようにわかった気がしたのだ。そして、改めて鈴木氏にクラウドとビッグデータの関係、そしてビッグデータの価値について聞いてみようと思い、取材をおねがいしたという経緯だ。

野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタントの鈴木良介氏

重要なのはクラウドに吸い上げられたデータ

TECH 大谷:そもそも鈴木さんがビッグデータに注目し始めたのはなにがきっかけなんでしょうか?

NRI 鈴木氏:先見の明のある顧客から調査依頼されたクラウドが発端です。当時、クラウドは中央集権型のメインフレームに近いものになると言われていましたが、利用側は決してダム端末ではないと思っていました。PCにしろ、スマホにしろ、専用端末にしろ、利用シーンに応じたさまざまなデバイスが必要になると考えていたんです。しかし、3Gのようなモバイルブロードバンドは簡単に使えますが、月額料金が高価です。お金がないと使えないので、いわば「貧乏の壁」になります。一方、有線ブロードバンドのエッジになる無線LANは安価だが、設定にスキルが必要になります。こちらはリテラシがないと使えないので「バカの壁」ですね。

TECH 大谷:確かにそうですが……(笑)。

端末から吸い上げられるデータが集まる場所としてクラウドが重要です

NRI 鈴木氏:この2つの壁を巧みに越えた端末・サービスが、Amazonの「Kindle」だと思うんです。3G回線を搭載するKindleは通信費をAmazon側が負担する代わりに、顧客承諾のもとで、さまざまなデータをクラウドに吸い上げることができます。Kindleは料金負担のしくみを工夫したために、クラウド上にデータを吸い上げる良い仕組みを構築できていると言えるんです。

TECH 大谷:クラウドは計算機資源やデータの共用が重要と捉えられていますが、データの収集場所という位置づけもあるんですね。

NRI 鈴木:はい。本当に重要なのはクラウドにデータを吸い上げることなんです。多種多様な端末からクラウドに溜められていくリッチなデータをどのように活用できるだろうというところから、ビッグデータに注目するようになりました。これが2009年くらいです。

TECH 大谷:なるほど。クラウドからビッグデータに行き着くというのもかなりユニークですね。

ICT市場から考えると次は「データ」しかない

NRI 鈴木氏:もう1つはベンダーの観点から見た、クラウド市場とビッグデータです。もとより、大型コンピューターを割り勘で使うというクラウドは、低価格化をもたらすので、ユーザーにとってはハッピーです。しかし、ベンダー間の勝ち負けはあれ、ICT市場全体にとってみればシュリンクの方向にしか導きません。しかも、潤沢なブロードバンド回線を使って、国内のICTはどんどん海外に引っこ抜かれていきます。こうしてIT市場はどんどん縮小移行していくわけです。

TECH 大谷:クラウドの破壊力とも言えますね。

NRI 鈴木氏:過去、ハードウェアからパッケージ、そしてSI、アプリケーションへと上のレイヤーに逃げてきたITの歴史から見ると、残されたのはもはやデータのレイヤーしかありません。そのあたりの危機感と次の飯のタネなんだ?という結実が、「2012年はビッグデータ元年」という言われる所以だと捉えています。

TECH 大谷:先日、富士通のビッグデータの勉強会で指摘されていたのは、結局今までICTベンダーは、物流支援なり、在庫管理支援なり、あくまで「支援」しかやってこられなかったという点です。これがビッグデータの時代になると、ICTベンダーがいわゆる顧客の本業を担えるよという話になります。

NRI 鈴木氏:まさにそれです。現状では、情報システム部門はどうしてもコストセンターとしての役割は否めません。経営層も「ICTはビジネスの根幹」といいつつ、コストは抑えたい。そのため、この数年でお金が動いているのは、仮想化とか、マネージドサービスとか、「以前と同じことが安くできる系の話」が主流です。

TECH 大谷:確かに、リーマンショック以降、ベンダーはコスト削減しか言わなくなりましたからね。

ビッグデータはICT領域に片足つっこみつつ、事業部門の人と面白く論議が盛り上がるはずの領域です

NRI 鈴木氏:こうした情シス主導のコスト削減はベンダーとすると脅威です。コスト削減と事業規模の縮小からの逃れようとすれば、結局プロフィットセンターである事業部門とつきあうしかないんです。プロフィットセンターとは利益が出るなら相応のコストはかけていいという部門です。ですが、このプロフィットセンターとおつきあいする際には、正直クラウドかオンプレミスか、仮想化をどうするかという話では、おつきあいしてもらえません。実装方法はプロフィットセンターの主たる関心事項ではないからです。ですから、コミュニケーションをとるにはベンダー側が少なくてもデータレイヤーに強くなる必要があります。しかし、この10年、事業部門ときちんとコミュニケーションをとれているICTベンダーはそう多くないはずです。

TECH 大谷:基本は情報システム部が相手でしたよね。

NRI 鈴木氏:そう考えると、ビッグデータってこの10年では珍しく、ICT領域に片足つっこみつつ、事業部門の人と面白く論議が盛り上がるはずの領域なんです。双方の事業領域がはじめて交差する部分とも言えますね。

TECH 大谷:事業部門とIT会社が盛り上がってコンテンツができたという話だと、先日取材した「アザゼルさんのFacebookゲーム開発をクラスメソッドが語る」がその例です。今は事業部門とICTベンダーが直接話せるというのはレアケースですが、今後は両者が歩み寄ってくると思います。

NRI 鈴木氏:その意味では今後ビッグデータに向けた人材も重要です。単にデータ分析だけであれば、業者もいっぱい出てきましたし、データの入手も将来的にはサービスになっていくはずです。ですから、社内にはうちの事業が儲かるために、どんなデータがあればよいかをきちんと解釈できるような人材が必要になってきます。ある意味、新規事業開発に近いスキルですね。

 鈴木氏とは、そのほかビッグデータを導入しやすい組織体制や既存業種でのビッグデータ活用とインパクト、データ流通や入手の促進などさまざまなテーマでもディスカッションでき、またしても有益な情報や示唆を得ることができた。ときに刺激的でキャッチーな鈴木氏の表現は、誤解を生むこともあるようだが、新しいビジネスを創出する試みとしてのビッグデータの取り上げ方は総じてとてもポジティブだ。ビッグデータにとどまらない、ICTビジネスの今後を占うオピニオンとしてきちんと咀嚼しておきたい。

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