Socket 7向けチップセットの
頂点を極めるまで成長
1997年10月には、Apollo VPXの後継製品として「Apollo VP3」が投入される。最大の特徴はAGPの搭載であるが、それ以外にも1GBまでのメモリーをサポートする(VP2は最大512MB)。
一番すごいのは早くも66MHzのSDRAM-IIに対応したことだ。これはDDR-SDRAMのことだが、なにせJEDECがDDR-SDRAMの規格をJESD79としてまとめるのは2000年で、この当時はまだ標準化作業を行なっている最中だったので、これに対応するメモリーは市場に存在しなかった。
また動作速度は66MHzのDDRのためDDR-133になるが、こんなメモリーはその後も市場に出ることはなかった。要するにDDR動作をする機能だけをメモリコントローラーに突っ込んだ、というのが正直なところだが、これがどこまで動くのかは誰も確認しておらず、使うのは危険とまで影では言われていたそうだ。
そうした地雷はあったにせよ、普通の構成で使う分にはまったく問題がなく、公式には66MHzのFSBまでに対応としたが、実際にはCyrixの75MHz/83MHz FSBにも対応できる性能を持っていた。このVP3、後継のMVP3が出るまで非常に広く利用される製品になった。
このVP3の後継として1998年にリリースされたのが、Socket 7向けCPUの頂点ともいえる「Apollo MVP3」である。100MHz FSBをサポートし、Super 7も対応した初めてのチップセットであり、これにあわせてPC-100 SDRAMのサポートも行なわれた。またAGP 2Xモードにも対応している。
同等の構成を持ったチップセットにはALiのAladdin VやSiS530などがあるが、こうした製品よりも非常に良く売れた。事実上、Socket 7 CPU向けチップセットの頂点を極めたと言える。見えないところでは、VP3で突っ込まれた謎のSDRAM-IIのサポートは早くも削除され、代わりにVC-SDRAMのサポートが追加されている。
順調だったチップセット事業を
奈落の底に叩き落した「Apollo MVP4」
ここまでは順調だったVIAのSocket 7チップセットを奈落の底に叩き落した、とまで書くのは大げさかもしれないが、Super 7の市場を確実に縮めたであろう製品が、続く「Apollo MVP4」である。
MVP3はデスクトップ向けのメインストリーム~ハイエンド向けという製品ポジションにある。ところが裾野を広げていこうとすると、バリュー向けあるいはモバイル向けといった方向性が必要になってくる。
すでにインテルはSocket 7を捨て、Pentium IIとCeleronというラインナップを1998年には完成させており、このCeleronに対抗するソリューションがSuper 7でも必要になった。肝心のCPUは、AMDのK6-2やCyrix M1が競争力のある性能と価格でリリースされていたから良いとして、チップセットもIntel 810に負けないものを用意する必要があった。Intel 810自身のリリースは1999年6月なので、当面はIntel 440BXのバリュー向けであるIntel 440EXや440ZXが競合製品だったが、Intel 810の話そのものは1998年中に知れ渡っていたため、当然対抗できる構成が必要である。
これに向け、VIAはMVP3にTridentのrCADE 3Dコアを統合したものをApollo MVP4として開発するが、生産は猛烈に遅れた。最初の製品アナウンスは1998年8月で、1998年11月にラスベガスで開催されたCOMDEX 98には搭載製品が並んでいる“はず”だった。ところが実際に搭載製品が出荷されたのは1999年5月のことである。遅れた原因として伝えられたのは、大きく2つあった。
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