今回はVIAのVT8501こと「Apollo MVP4」の話をご紹介したい。このチップセットは、市場への投入が遅れたことでシェアを失ったという点で、前回のSiS630と非常によく似た顛末をたどっている。
やや話が飛ぶが、SiS630の黒歴史でも「実際にはSiS630を搭載した製品は結構あった」、「後継製品も出ている」といった声をいただいた。これはその通りであって、半年強の遅れで製品は投入された。それに続く形でSiS633や635、あるいはSiS730S/733/735といった製品がリリースされているため、現在の感覚で言えば「最初だけすこしつまづいたがあとは順調」であろう。
問題はこの当時のチップセットのラインナップは、半年未満で切り替わるほど猛烈に入れ替わりが激しかったことだ。つまり半年遅れというのは、それだけで最低1世代、下手をすると2世代ほど古くなってしまうわけで、これは競争力に大きく欠けることを意味し、その結果として、せっかくのシェアを失うことに繋がりやすいし、事実そうなった。今回のApollo MVP4も、非常にこれと似た経緯を辿っている。
着実に実績を重ねていく
VIAのチップセット事業
VIAのインテル向けチップセットの話は、連載50回で紹介しているが、もう一度改めて触れたい。元々Pentium向けの最初の製品は、1995年に登場したApollo Masterこと「VT82C570M」が最初の製品である。
これに続き1996年には、Socket 7に対応させたApollo VP(Apollo VP1)こと「VT82C580」が登場する。Apollo Masterは5チップでシステムが構成されたのに対し、Apollo VPではサウスブリッジが「VT82C586」になったことで多くの機能が統合され、チップ数も合計で4チップとなった。
ここまでは、まだVIAの製品の競争力はそう高くなく、様々なメーカーのマザーボードに搭載されたとはいえ、一大勢力になるほどのものではなかった。が、これに続いて1997年1月にリリースしたApollo VP2こと「VT82C595」では、遂にノースブリッジがワンチップ化。システム構成もずっとすっきりしたものになった。
さらに同年、マイクロソフトやインテルなどが提唱する“PC97”に準拠することを示すため名称は“Apollo VP2/97”になったが、これはサウスブリッジがPC97準拠の「VT82C586B」※1になっただけで、ノースブリッジ側は同じままである。
※1 当初は「VT82C586A」という、PC97非対応のサウスブリッジが組み合わされていた。
この「Apollo VP2」は、FSBこそ66MHzまでのサポートになっていたが、2次キャッシュとして最大2MBまでのPBSRAM(Pipeline Burst SRAM)を搭載でき、またFPDRAM/EDO DRAM以外にSDRAMを利用することも可能となった最初の製品である。
AGPこそ未搭載ながら、Intel 430TXと同等以上の性能を出し、かつ安価ということで、次第にマザーボードメーカーが採用例を増やし始めたのが、このApollo VP2であった。特にApollo VP2/97はAMDにOEM供給され、AMD-640チップセットとしてリリースされたのは、最大の成功であろう。
Apollo VP2に続き、同じ1997年に「Apollo VPX」もリリースされる。こちらは下図でもわかる通り、再びノースブリッジが3チップ構成になっている。先程のApollo VPと同じ構成であり、既存のApollo VPをベースにしたマザーボードで、チップセットをApollo VPXに切り替えるだけでApollo VP2と同じ性能になるという、いわば橋渡し的な存在である。
Apollo VPXも、サウスブリッジにVT82C586Bを使ったものはPC97準拠ということで、これを示すためにApollo VPX/97という標記がなされることもあった。ただマザーボードメーカーもこの頃はものすごい勢いで新設計の製品を投入している時期だったので、古い設計を生かして新製品にするといったニーズはあまり無かったようだ。そのため、国内でApollo VPX搭載マザーボードはあまり多くは見かけなかった。とはいえ、こうした古い設計を生かすような製品パスを提供してくれることを好意的に感じるメーカーは多かったようで、この頃から急激にVIAのチップセットを搭載する製品が目立ち始める。
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