Windows 8でNFCを使ってみる
冒頭で述べたように、Windows 8もNFCに対応している。しかしハードウェアが必要なので、Windows 8搭載PCがNFCに対応しているかどうかは別の話だ。NFCを内蔵したPCはまだ少なく、非対応PCで使うには、外付けのNFCアダプターが必要となる。
今回はNFCを内蔵しないPCに、ソニーが販売している非接触カードリーダー「RC-S380」を接続してみた。ソニーが提供しているドライバー類をインストールすれば、あとはWindows 8のNFCサポート機能が動作した(Suicaのビュアー機能も利用できる)。
機能としては、P2P機能およびリーダー/ライター機能が動作するようだが、手元に適当な相手側デバイスがなく、リーダー/ライター機能はテストできなかった。市販のBluetoothデバイスの中には、NFC機能を内蔵していてNFC経由でペアリングできるデバイスがある(例えばソニーは対応スピーカーを発売している)。これらは、NFC機能が利用可能なWindows 8に対応しているという。
Windows 8はデバイスドライバーより上の部分を提供しており、提供されているAPIを使うことで、アプリケーションはNFCを使って通信できるようになる。また組み込みの機能として、NFCを使ったBluetoothのペアリング機能(Proximity Pairing Experience)と情報共有機能(Proximity Sharing Experience)がある。
Windows 8でNFCを使ったP2Pを試すには、NFC対応のAndroidスマートフォン/タブレットで、Androidビームを使うのが簡単だ。ただしAndroidビームは拡張機能があり、写真データなど大量のデータ転送にはBluetoothを併用するようになっている。だが、この機能は今のところWindows 8には実装されておらず、大きなデータを送信することは困難だ。NFC通信は13.56MHzという低い周波数を使い、転送速度は最大424kbps(53KB/秒)しかない。そのためテキスト情報などは送れるものの、MB単位のデータを送るのには向いていない。
Androidビームは対応アプリケーションを利用している場合、NFCデバイスを検出すると自動的に起動される。例えば、ウェブブラウザーを起動中に他のNFC機器にかざすと、現在閲覧しているウェブサイトのURLを送信できる。これはAndroidの標準ウェブブラウザーが、Androidビームに対応しているためだ。
この機能を使うと、スマートフォンで閲覧中のページのURLを、Windows 8側に送って表示できる。ウェブブラウザーを使いながらAndroidスマートフォンをWindows 8に接続したNFCアダプターに接続すると、Androidビームが起動する。
Android側がWindows 8のNFC機能を検出すると、自動的にP2P転送の準備を始める。Androidビームでは画面が縮小表示となり、画面タップで送信を開始する。送信するとWindows 8側には、画面右上にトースト表示(アラート表示)が現われる。これをタップすればデータを受信する。このとき、Android側からはURLが送られてくるため、これを解釈できるアプリケーションであるInternet Explorer 10(以下IE10)が起動して、該当のページを表示する。スマートフォンで読みかけのウェブページを、PC側で続きを読むなんて時に役立つ。
逆にWindows 8からURLを送信することも可能だ。IE10でウェブページを表示した状態で、AndroidスマートフォンをWindows 8側のNFCアダプターと接触させる。ここでWindows 8側の「デバイス」チャームを開くと、「タップして送信」という項目が追加されている。これをタップすると、表示中のウェブページのURLを、スマートフォン側に送信できる。
Windows 8は標準で、NFCによるP2P通信(受信)やペアリングに対応しているという。また、各種のAPIが用意されているため、アプリケーションを容易にNFC対応とすることが可能だ。
NFCは普及しはじめたばかりで、対応はスマートフォンのほうが進んでいる。NFC機能を搭載した家電製品も、接続対象はAndroidスマートフォンだ。そのため、まだWindows 8用の対応アプリケーションは少なく、使える場面も限られているのが現状だ。だが、すでにAndroid用にNFC対応アプリや対応家電・健康機器などが発売されているため、Windows 8での対応にもそれほど時間はかからないだろう。
この連載の記事
-
第34回
PC
Windows 8の狙いは、UIの変化よりもAPIの変化が本質 -
第33回
PC
Windows 8が動作しなくなった? 新しくなった修復機能 -
第32回
PC
Windows 8でIMEに求められる新しい要素とはなにか? -
第31回
PC
Windows 8の無線LANをコマンドラインで細かく制御 -
第30回
PC
Windows 8をマウスで使いやすくするレジストリの小技 -
第29回
PC
周辺機器・アプリがWindows 8/RTで動くか確認する方法 -
第28回
PC
Windows 8のキーボードショートカットを全公開 -
第27回
PC
Windows 8が使いにくい? マウスを変えると印象も変わる -
第25回
PC
実は扱いがまったく異なるWindows 8でのタッチパネル -
第24回
PC
Surfaceから見えるWindows RTの実像と、将来PCへの影響 - この連載の一覧へ