長らくご愛読いただいた本連載も、今回で最終回となる。今回は、これまでのまとめと合わせてWindows 8そのものについて考えてみることにしよう。
Windows 8とは
改良Windows 7+Windows 8スタイル+新しい作法
Windows 8はカーネル周りも変更されてはいるが、その部分の多くをWindows 7と同じものに頼っている。マイクロソフトは「Windows 7で動くものはWindows 8でも動く」としており、カーネル周りには大きな変化はない。ただし、アーキテクチャーの異なるARMプロセッサーでも動作しているところから、機能とは別にプログラムコードとしては、かなり整理されたものになったと考えられる。
タッチのみで操作するタブレット環境を想定して、Windows 8は「チャーム」などの新しいユーザーインターフェースの作法を導入した。多くの機能はWindows 8スタイル側でもデスクトップ側でも動作する。デスクトップには従来からのデスクトップの作法があるように、Windows 8スタイル側のアプリケーションにも別の作法がある。チャームやスタート画面はその間に存在する機能で、タッチパネル/マウス/キーボードといった入力デバイスの、どれでも操作できるようにしてある。
Windows 8スタイル環境はタブレットを想定したUIといわれているが、その本質的な部分は「APIセットの改良」あるいは、「.NET Frameworkの再定義」にあったと考える。
2009年にWindows 7が登場したのち、マイクロソフトはWindows Phone 7を2010年に発表している。当時の2009年後半には、「アップルがタブレットを開発している」との噂があった。それが「iPad」として発表されたのは、2010年の1月。同じ1月初頭には、マイクロソフトはInternational CES 2010前日の講演で、「スレートPC」というコンセプトを発表している。
このときデモされたのは、タブレットの形をしたWindows 7マシンだったが、当時はWindows 8の基本方針が決まる頃の話であり、すでにWindows 8でタブレットに対応する方針を決めていた、と考えてもおかしくはない。
翌2011年のInternational CES 2011でマイクロソフトは、Windows 8のARM対応を発表した(関連記事)。ARM対応にした最大の理由は、低消費電力のプラットフォームでWindowsを動かすことだ。従来のPCだけが対象であれば、ARM対応は不要である。バッテリーで長時間動作できるタブレットやスマートフォンのようなモバイルデバイスを作る必要があったからこそのARM対応であろう。
Windows 8の主要なライバルは、iOSやAndroidだと考えたからこそ、同じARMプロセッサーを使って、同等のハードウェア環境での競合を選択したのだと思われる。それが功を奏したかは、今のところなんとも言えないが。
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