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事業者よりユーザー視点で考えた「理想のデータセンター」

クラウド型と異なるコンセプトを持つキヤノンITSの西東京DC

2012年10月22日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)は初の自社設備となる西東京データセンターを建設、10月17日より本格稼働を開始した。開業に先立って施設内部を見学する機会が得られたので、最新のデータセンターのファシリティについて紹介したい。

西東京データセンターの建物外観イメージ(以下、写真はキヤノンITSより提供

セキュリティ設備から機器スペースまで贅を尽す

 キヤノンITSの西東京データセンターでは、高効率を追求したクラウド型の郊外型データセンターが出現する直前に話題になった高品質データセンターの要件がちりばめられている。たとえば、床下高1m、平米当たりの床耐荷重1.5tといったスペックは、おおよそ3~4年前によく話題に登ったキーワードだ。その後の自然冷却中心の高効率データセンターではエアフローの考え方が根本的に変わっているため、床下高はあまり高くなくてもよいといった具合に変化している点だけを見ると、古い設計トレンドのまま完成してしまった、といった見え方にもなるかもしれないが、やはりクラウド型データセンターとは用途が違うと考えるのが適切だろう。PUE値も、現時点で標榜されている値は1.4で、自然冷却中心の郊外型データセンターとは直接比較できる水準ではないが、都市型データセンターの値としては優秀だと言える。

床下高は1mを確保し、さらに耐荷重も1.5tを実現している

 高信頼性を追求する姿勢は、入退室管理のためのセキュリティ設備から、将来の大規模な機器更新までを見越した余地の確保まで、多岐にわたる。正直、話を聞いただけでも「採算が合うのだろうか」といらぬ心配をしてしまうほど、贅沢なまでの冗長化が行なわれている。

データセンターの玄関上部のイメージ

 典型的なのは、冷却のためのターボ冷凍機の設置スペースだ。冗長化を考えて2台分の設置スペースがあるのは当然として、さらにもう1台分のスペースが空いていた。これは、将来ターボ冷凍機の機器更新を行なう場合、古くなった設備を停止して撤去し、新しい機器を据え付けて運転を再開するまでの期間に冗長性が低下するのを避けるためだ。つまり、古くなった機器を停止する前に新しい機器を運び込んで運用開始準備を終えておけば、冗長性を一切低下させることなく機器更新が可能になる。機器の耐用年数と交換作業に要する期間との比較で考えれば、まさに将来一瞬必要になるだけのスペースを最初から確保しているということになる。

 同様の配慮はその他さまざまな設備についても行なわれている。非常用発電設備であるガスタービンの設置スペースも余分に確保してあるなどだ。また、サーバールームには消火ガスが吹き出す際の空気振動が機器に悪影響を及ぼさないように消音器が取り付けられているなど、ユーザー目線の細かな配慮が詰め込まれている。

(次ページ、縦揺れ対応も!高い耐震性能を確保)


 

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