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幕張から西東京データセンターへの物理移設完了、顧客向け移設サービスも開始

基幹システム49ラックを3日間で移設せよ!キヤノンMJの挑戦

2013年07月25日 13時05分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループでは今年5月、グループ社員約2万人が利用する基幹システムを格納した全49ラックを、システム休止3日間という短期間で移設した。そのノウハウを生かし、7月25日からは顧客向けのデータセンター移設支援サービスも開始する。物理的にデータセンターを移設する現場ではどのような課題が生じるのだろうか。今回の経験をキヤノンMJに聞いた。

今回のメインサイト移設に伴いキヤノンMJグループのBCP体制が強化された

BCP強化のためトラック23台におよぶ「引越し」

 キヤノンMJグループでは過去数年にわたって、積極的にBCP(事業継続計画)体制の構築に取り組んできた。2010年から数次にわたって仮想化によるサーバー統合を実施し、サーバー台数を206台から29台へと86%削減している。また2011年7月にはDR(災害対策)サイトとして、同社の沖縄データセンター内にバックアップサイトを構築した。

 そしてさらなる安全性を確保するために、2012年10月、データセンターの移設プロジェクトが立ち上がった。キヤノンMJ幕張事業所内にあるメインサイトを、同社の西東京データセンターに移設するというプロジェクトだ。

 幕張事業所は一般的なオフィスビルであり、例えば漏水や火災、ビル法定点検による停電、物理セキュリティなど、基幹システムを配置する環境としては稼働安定性やサービスレベル、セキュリティ、事業継続性などの面で課題を抱えていた。そこで、最新鋭のファシリティとセキュリティを備える西東京データセンター(関連記事)への移設が強く望まれていたという。

メインサイトを幕張事業所から西東京データセンターに移設

 移設は決定したものの、社内/社外(キヤノン製品小売店など)利用者への影響も考慮すると、システムを長期間停止させることは許されなかった。結局のところ移設作業に与えられた期間は、ゴールデンウィーク中の3連休(と予備日1日)のみだった。

3日間で作業完了させるための綿密な計画

 失敗の許されない厳しい日程条件をクリアするために、プロジェクトでは綿密な事前調査と計画、リハーサルを行った。

 まず移設対象はサーバやストレージとし、ネットワーク機器はラック21台分を移設先に新規導入、ケーブリングを済ませて“待ち受ける”こととした。また作業全体を6グループに分け、各グループの作業員が並行して動き、作業が完了したシステムから順次復旧させることで短時間での復旧を目指した。もっとも、データセンター周辺が住宅地のため、搬入が昼間にしか行えないなどの制約もあった。

 予想されるさまざまなリスクに備え、各種バックアップ手段も確保された。例えばIT機器の搬送に必要な4トントラックの台数は23台だったが、車両故障や事故などに備え25台を用意した。またトラックの通行ルートは複数を確保したうえ、連休中の移設ということもあり、そのルートが渋滞しないかどうかを事前に検討した。

 万が一、移設に伴う大きな障害が発生した場合は、沖縄のバックアップサイトを運用する手はずとなっていた。移設中はこのバックアップサイトを利用するという運用方法も考えられるが、今回は3日間で作業が完了するめどが立っており、バックアップサイトへの切り替え/切り戻しにかかる時間とリスクを考え実施しなかったという。

移設プロジェクトの成功要因。念入りなリスク検討と代替手段の準備が功を奏した

苦労した点。1,500本以上のケーブルを1本ずつ人手で断線チェックしたが、やはり配線/結線のトラブルは多かったという

設置スペース削減という副次的メリットも

 移設に伴い発生した障害はゼロではなかったものの、システム稼働に影響を与えるようなクリティカルな問題は期間中にすべて解決することができたと、キヤノンMJではまとめている。

今回の移設では94件の障害が発生した。ただしシステム稼働に必須のものは優先的に解決し、作業期限内に復旧にこぎつけている

 移設によって高品質なデータセンター環境を得るという当初の目的は果たされたわけだが、メリットはそれだけではなかったとキヤノンMJでは述べる。

 移設前の幕張サイトでは、およそ600平米のサーバー設置スペースを占有していたが、実は以前実施したサーバー統合の結果としてフロア内にラックが点在する“歯抜け”状態であり、非常にスペース効率の悪い状態だった。今回の移設によってこれも解消され、全70ラックがおよそ250平米のスペースに収まったという。

 また、移設作業日程を何段階かに分けるという案もあったが、一度に実施する(ワンショットで実施する)ことにより「人件費だけでも30%削減できた」と述べている。

顧客向けサービスとして横展開を開始

 今回のノウハウを生かし、移設作業とシステム構築を担当したキヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)では移設支援からシステム構築・運用、ネットワーク構築までをワンストップで提供するサービスを本格的に開始する。

 キヤノンMJの事例にも見られたとおり、データセンターの物理移設においては、大量の機器設定変更など作業の複雑さ、移設に伴う障害発生などのリスク、経験不足による移設プロジェクト運営の難しさといった課題が生じる。移設をプロフェッショナルサービスとして提供することでこうした課題を解決し、システム停止を短時間に抑えることができるとキヤノンITSでは述べている。

データセンターの移設では、通常のシステム運用管理とはまったく異なる課題が生じる

 キヤノンITSの移設支援サービスは、機器の物理移設作業だけを実施する「移設コーディネートサービス」と、移設プロジェクトの立ち上げから事前調査、計画/設計、移設準備/実施、移設後の運用まで全面サポートする「移設コンサルティングサービス」の2つのメニューを用意している。

 なおキヤノンITSによれば、現在、西東京データセンターを利用する顧客の8割は既存サイトを同データセンターに移設する顧客だという。同社では、こうした顧客に支援サービスを積極的にアピールしていくと述べている。

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