LINEはiモードの「if」を現実化する
―― コンテンツプラットフォーム機能も持つLINEに対して、“あり得たかもしれない、iモードの進化系”を体現している、という意見もあります。つまり、メッセージの交換に留まらず、それを媒介としてゲームや様々なコンテンツへの導線を形作るというのは、もしiモードをドコモというキャリアから分離してOTTとして展開していたら……という未来像です。
舛田 「実際、社内でもiモードのことは話したりします。あれほどのエコシステムはやはり参考になりますね。実際スタンプは絵文字だし、LINEサウンドは着うた・着メロに系譜があります。
ただ、やはりiモードの限界もあったわけです。世界制覇を目指すにはあの当時は技術的な限界もあったし、ドコモという会社がやるべき、あるいは世界展開できるかというと、それはなかなか難しかった。
ですから、私たちのようなOSもデバイスも持たないデベロッパーが手がければ可能かもしれないと。よく『LINEフォンは出ないんですか?』という質問を受けるんですが、得意じゃありませんから(笑)。我々は得意な事をやります」
―― 色々持ってしまうことが逆に足かせになってしまう。LINEを手がけるNHN Japanは身軽でしがらみも少ないことが逆に強みなのですね。
舛田 「そういう面もあると思います。iモードでやっていたこと、あるいは日本のフューチャーフォンでやっていたようなビジネスは非常に洗練されていて、色んな知見が詰まっている、にも関わらず海外展開することができなかった。現地法人を作らなければならなかったり、パートナーを苦労して見つけても全然売上が上がらなかったといった時代的な制約もそこにはありました。
ようやくスマートフォンの時代になり、ビジネス展開上の国境が曖昧になりつつあります。LINEのようなアプリも国外に出やすくなった。そのLINEがプラットフォーム化することで、日本で磨かれたコンテンツやサービスが打って出られる、LINEはそのお手伝いができるはずです」
著者紹介:まつもとあつし
ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環博士課程に在籍。ネットコミュニティーやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。『スマートデバイスが生む商機 見えてきたiPhone/iPad/Android時代のビジネスアプローチ』(インプレスジャパン)、『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)、『スマート読書入門』(技術評論社)、『ソーシャルゲームのすごい仕組み』(アスキー新書)も好評発売中。Twitterアカウントは@a_matsumoto
最新刊は、従来メディアからインターネットへのメディアシフトがもたらす変化と、デジタル時代のコンテンツビジネスの現状を整理した一冊、『コンテンツビジネス・デジタルシフト―映像の新しい消費形態』(NTT出版)。
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