“最初から最後までおもしろいAVG”という理想を追求したシナリオ
何をもって“傑作”と表現するのかと言えば、1つはシナリオのうまさ。“シナリオがよい”と一概に言っても、そんなAVGは世の中にいくつもあります。では、一体何がよかったか? それは、“シナリオのテンポのよさ”と“冒頭からラストまで一貫しておもしろい”という点です。
日々仕事ばかりしている社会人にとって、自由に使える時間ってものすごく貴重なものだと数年前から思うようになりました。年齢が30歳に近くなった今、僕が1日に自由に使える時間って、休日を除くと1日1時間くらいが限度ですからね。そんな貴重な時間を使うわけですから、ゲームがつまらないと「時間をムダにした!」と悔しくなるんですよ。
AVGなんかだと、よく“最後のほうはめちゃくちゃおもしろい”とか“グランドルートがおもしろい”というような評判を聞きます。それで実際にプレイしてみると、序盤から中盤にかけてとても退屈だったり、中だるみが激しかったり……そうなると目も当てられないわけです。序盤から中盤は退屈だけど、最後まで読むとめちゃくちゃおもしろい。その最後の展開を見てほしいのはわかる。でもそれって、手放しで“おもしろい”と評価していいのでしょうか?
“終わりよければすべてよし”なんて言葉もありますが、多くの時間を消費できた以前であれば、それでも許せたのかもしれません。でも、今は無理。こちらとしては、最初から最後までおもしろいゲームがやりたいんです。それでいて、エンディング間近の終盤で、さらなる盛り上がりを見せてくれれば万々歳。
“最初から最後までおもしろい”というのはAVGとして理想であって、実現できている作品はなかなかありません。でも、この『ルートダブル』は、序盤の状況説明が終わると、火災発生→爆発→有毒ガス発生→崩落→他殺体の発見……というように、次から次へと問題が発生します。そうやってどんどん状況が変わることで、息つく暇がないのです。とにかくシナリオの疾走感と緊迫感が素晴らしく、それが最後まで続きます。
なおかつ、不必要な説明や描写をことごとく排除し、スラスラ~っと先へ読み進めることができる“テンポのよさ”も、僕は高く評価しています。AVGは、「なんか退屈だなぁ」と感じる時間が多ければ多いほど負けなんです。本作は、オールクリアまで40時間くらいかかる大長編です。ボリュームがあればいい、なんてことは言いません。問題は密度。『ルートダブル』では、「退屈だ」と感じる瞬間が40時間のプレイタイムに対して、ものすごく少なかった。これは、シナリオの密度か高いことを証明しているのだと思います。
“物語と完璧に融合したシステム”によりワンランク上のAVGに
正直、ここまでの話だったら“傑作”ではなく“良作”と表現していたと思います。“傑作”なんて、なかなか言えませんからね。体操の得点で10点をつけないように(今は違いますけど)、個人的には5年周期くらいで使いたい言葉です。でも、2年に1回ぐらい使えたら、とても幸せ。
そろそろ本題に入りましょう。なぜ“傑作”と表現できたのかというと、“システムによってプレイヤーが物語に参加できる”から。“プレイヤーが物語に参加できる”ということは、“主人公に、より感情移入できる”ようになり、“危機的な状況で、より緊迫感を味わえ”、“感動できる場面では、より感動”できます。つまり、物語を1つ上の次元で楽しむことができるようになります。
さらに本作のシステムのよくできたところは、“システムが完璧に物語&設定と融合している”点。分岐のための単なるルール付け、ゲームと表現するための“物語とまったく関係ないシステム”から脱却を図っていて、それを見事に実現した稀有なシステムになっています。このシステムを使って、“プレイヤーが自分の手でカタルシスを演出できる感覚”は非常に新鮮で、普通のAVGでは味わえない快感を得られます。これらの要素により、ワンランク上のAVGになっている、と言っても過言ではないと思います。
もちろん、本作のよさはこれまで述べてきた2点だけではありません。それは、実際にプレイして体験していただければと思います。本作についての詳しい情報が知りたい人は、レビュー記事や特集ページでご確認ください! AVG好きはもちろん、普段はAVGをプレイしないユーザーにも自信を持ってオススメできる作品です。ぜひ、ご注目ください。
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(C)イエティ/Regista
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