話を戻すと、3DImage 9850の後継となるのが、1999年に投入された「Blade3D 9880」である。こちらはナンバーこそ大きく変わっていないが、同社としては初めての128bitエンジンであり、少なくとも画質に関しては、まともに表示できるようになった。
「性能」という観点では、同時期に登場したNVIDIA「RIVA TNT」の半分未満の性能でしかなかったが、狙っているマーケットが異なるから、これはよしとされた。実際、アプリケーションによっては「Intel 740」と互角の性能を出した場合もあったから、Blade3D 9880はよく健闘したというべきであろう。
これに続けて、コアの動作周波数を110MHzから135MHzに引き上げた「Blade3D Turbo 9880T」や、9880を半分の64bit構成にした「Blade T64 9970」、9970の構造のままメモリーバスだけ128bitに戻した「Blade XP 9980」などの製品を投入。これらを搭載したグラフィックスカードも、2001年頃に市場に投入された。だが、グラフィックスカード向けの製品はこれでいったん打ち止め。この後XP4が投入される2002年末まで、新製品はなかった。
グラフィックスコアのライセンスに活路を見いだす
その代わり、当時のTridentは新たに、グラフィックスコアのライセンスという新しいビジネスを開拓していた。まずVIA Technologiesに対してrCADE3Dエンジンを提供。これを内蔵した「Apollo MVP4」チップセットとして、1998年末にリリースされる。続く1999年にリリースされた「Apollo ProMedia」「Apollo PLE133」も、同様にrCADE3Dエンジンを搭載したチップセットである。
だが連載50回でも触れているが、rCADE3Dでは性能的に十分とは言えなかった。特にApollo MVP4では、リリースが当初の予定から半年近く遅れる原因がrCADE3Dにあったことも災いしてか、この後VIAは買収したS3社のグラフィックスコアを内蔵する方向に切り替える。
VIAに続いてTridentは、ALiチップセットへのグラフィックスコア供給を開始する。当時のALiは1999年に、「ALADDiN 7」でArtX社のグラフィックスコアを内蔵するが、ArtXがATI Technologiesに買収されてしまい、継続できなくなった。そこでNVIDIAからRIVA TNT2のコアを購入して、「ALADDiN-Pro2」に統合したものを1999年11月に「ALADDiN-TNT2」として発表するが、チップセットに統合するにはRIVA TNT2のコアは大きすぎたし、消費電力も大きすぎた。
そこで後継のALADDiN-Pro4に、Tridentの「CyberBlade 3D」コアを統合して、「CyberBlade ALADDiN 1」として2000年に発表する。このCyberBlade 3Dは、ほぼBlade T64 9970に近い構造で、UMAをサポートしたのが大きな違いである。これに続き、コアを改良した「CyberBlade XP2」を搭載した「CyberALLADiN」「CyberALLADiN-P4」が、それぞれ2001年と2002年に出荷される。
ノートが搭載するグラフィックス機能が、当時までの「チップセット+グラフィックスチップ+グラフィックスメモリー」という構成から、「グラフィックス内蔵チップセット+UMA方式メモリー」という構成に推移することは、2000年あたりから明確だった。そうなると、Tridentの稼ぎ頭だったノート向けグラフィックスチップが早晩立ち行かなくなるのは明白だ。
そこでチップセット向けに製品展開……というアイデア自体は間違っていなかった。だが、そもそも当時チップセットベンダーは、インテルにNVIDIA、ATIとVIA、SiS、そしてALi(後にチップセット部門をULi Electronicsに分離)の7社しかなかった。インテル/NVIDIA/ATI/SiSは自社でグラフィックスコアを用意できたから、残るはVIAとALi/ULiしかない。そしてVIAがS3買収でグラフィックスコアを入手したので、Tridentに残された唯一の顧客はULiだけとなった。
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