GPU黒歴史の15回目は、Trident Microsystems社(以下Trident)の「XP4」をご紹介しよう。最終的に、同社のグラフィックス部門の幕を引いた製品でもある。とはいえ、ベテランPCユーザーでも「Tridentってなんだっけ?」という人は少なくなさそうなので、まずはTrident自身についての説明から始めよう。
ローエンド中心で地道なビジネスを
続けたTrident
Tridentは1987年に設立された、グラフィックスチップの企業である。当初からローエンド志向の製品を提供していたため、同じくローエンド向けグラフィックスチップをメインにすえたOAK Technology社(こちらも1987年設立)と、ローエンド争いを繰り広げていた。
OAK Technologyは途中から、サウンドカードとかATAPIデバイス向けのコントローラチップ分野にも進出したが、その一方でグラフィックスチップの性能改善に遅れを取った結果として、2003年にはセットトップボックス向けチップで有名なZoran Corporationに買収されてしまった。後述するが、Tridentも同じく2003年にグラフィックス部門を切り離しており、この2003年というのは、ある意味ローエンド陣営の転換期だったのかもしれない。
Trident最初の製品は、1987年の「TVGA 8200LX」で、これはCGA互換の製品だった。翌年には「TVGA 8800」という、VGA/SVGA互換製品を投入する。さらにTVGA 8800のマイナーアップデートバージョンが、1989年から投入された「TVGA 8900」シリーズで、メモリー搭載量を最大2MBまで引き上げて(TVGA 8800は最大512KB)、16bitカラーに対応させた製品である。1992年になると、このTVGA 8900にRAMDACを内蔵した「TVGA 9000」シリーズを発表する。
ここまでのシリーズは特にアクセラレーターなど搭載しないもので、性能もそれなり……というかローエンド製品そのものであった。だが90年代前半ともなると、Windowsの普及によってそろそろアクセラレーション機能なしでは難しくなってきた。こうした傾向を受けて、Tridentはまず「TVGA 9200/9300/9400」シリーズを投入する。
このうちTVGA 9200(正確にはTVGA 9200CXR)は、まだアクセラレーターを一切搭載していなかった。しかしISAバスに加えてVL-Busにも対応していたほか、フレームバッファに利用したDRAMも60nsに対応する高速なメモリーだったため、「アクセラレーターなしのグラフィックスカードとしては」高速な部類に属した。40MHz以上の速度で駆動してもちゃんと動作するという点では、むしろ貴重なグラフィックスチップのひとつだったと言えるだろう。
これに続いて同社の製品には、「TVGA 9380/9385/9388」というラインナップがあることはわかっている。しかし手持ちの資料では、このTVGA 9300番台が綺麗にスルーされてしまっており、詳細が判らない。ただ、アクセラレーション機能はまだ搭載されていなかったようだ。
1994年には、「TGUI 9440」という製品が投入される。Tridentとしては初めてWindows向けのアクセラレーション機能を搭載した製品だ。といっても、単にBitBltエンジンを搭載しただけで、しかもその性能があまり高くなかった。なにせ特に高速なCPUを搭載しているPCで、VL-Busを40MHz駆動とした場合、TGUI 9440よりもTGVA 9200の方が早いこともあったほどだ。
このTGUI 9440は同社としては初めてPCIに対応した製品でもあったが、悪いことに当時はまだPCIの性能もかんばしくなく、これもまた足を引っ張ることになった。もっとも所詮はローエンド向けだったので、この性能の低さがそれほどクリティカルとなるわけではなかったのだが……。
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