以前にNVIDIA GPUロードマップをアップデートしたのは、4ヵ月ほど前の連載133回だった。その後、「Kepler」搭載製品も無事発売されたので、今回はNVIDIAのGPUロードマップの現状と今後について解説しよう。
無事に登場した28nm Kepler
生産量の短期間での増大は難しい?
NVIDIAは3月22日に「GeForce GTX 680」を、4月29日には「GeForce GTX 690」を発表した。GeForce GTX 680は「Radeon HD 7970」に性能面で十分勝てる内容で、消費電力も低いとあって、まずまずの評判である。またGeForce GTX 690は現時点では間違いなく最速のGPUであり、今のところ他を寄せ付けない。999ドル(約8万円)という予想価格が、日本国内では10~12万円近くと高騰しているのは、多分にご祝儀相場ということもあるが、なにしろ当初は絶対的な数が少ないから、当面は並行輸入品の流入によって価格が下がる見通しもない。
登場前はいろいろと取りざたされた28nmのKeplerだが、なんとか順調に量産を開始したようだ。TSMCも28nmプロセスの歩留まりに関しては、「十分に満足できるレベルになった」とコメントしている。目下の問題は歩留まりそのものよりも、ウェハーのスループット(生産量)にあるという。
AMDやNVIDIA以外にも、非常に多くのベンダーがTSMCの28nmプロセスを使って生産を行なっており、その結果として、TSMCの生産量は早くも頭打ちになってしまっている。これはある意味自業自得であるのだが、TSMCが32nmプロセスをスキップした関係で、多くのメーカーが新製品を全部28nmプロセスに突っ込んできており、結果としてTSMCの28nmは立ち上がり直後から一杯一杯になってしまっているわけだ。
解決策は28nmの量産設備を増強するしかないのだが、こうした先端プロセス向けとなると、製造装置もそう簡単に作れるものではない。「既存のラインの製造装置を入れ替えて、28nmプロセスの生産能力を増強する」と口で言うのは簡単でも、実際は生産能力が増強されるまでに、半年以上を要する状況になっている。つまりTSMCの生産能力の逼迫は2012年一杯、下手をすると2013年まで引きずることになりそうだ。こうした状況は製品計画にもいろいろな影響を及ぼすわけだが、それはまた後述する。
ロードマップに話を移すと、まず3月に「GK104」コアをGeForce GTX 680としてリリース。ついでGK104を2つ搭載したものを、GeForce GTX 690として5月にリリースした。これに続き、やはりGK104コアを使いつつ、シェーダーの数を減らした「GeForce GTX 670」が、先週に発表された。
このGeForce GTX 670では、シェーダー数(NVIDIA用語ではCUDAコア)がGeForce GTX 680の1536個から、1344個に削減されている。Kepler世代でNVIDIAは、内部構造を大幅に変更した。Fermi世代の「GeForce GTX 580」では「SM」(Streaming Multiprocessor)と呼ばれるものを8つ搭載しており、各々のSMは内部に64個のCUDAコアと呼ばれるエンジンを搭載していた。このCUDAコアが俗に言うシェーダーそのもので、8×64=512個という計算になる。
それがKeplerでは「SMX」という名前に変わっている。GeForce GTX 680は8つのSMXを搭載するが、ひとつのSMXの中にはCUDAコアが192個搭載されているので、8×192=1536個という計算である。GeForce GTX 670ではSMXをひとつ無効にした7つ構成を取っているので、7×192=1344個という構成になるわけだ。

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