ウルトラブックは制約なく価格もリーズナブル
後藤 「ところでウルトラブックのガイドラインにはどんなものがあるんでしょうか」
石井 「最近発表された資料によると、15mm、18mm、21mmの3種類があるみたいです。15mmの機種は実際に見たことはないんですが。それぞれに要件が決まっていて、15mmに収めるためには筐体はカーボンファイバーじゃないとダメで、HDDも7mmあるいは5mm厚にするとか。今のところ21mm以下、18mm以下というのが一般的ですが。ただ、これから外れるものもいくつかあるので、そうじゃないとCPUを売らないとか、そういう話ではないようです」
後藤 「SSDが必須になったという話もあるようですが」
石井 「手元の資料にはそういう記述がないから、これはSSDじゃなきゃダメということじゃなくて、ハイバネーション速度や薄さの問題からじゃないかと思います。薄さ以外にもハイバネーションからの復帰が7秒以内といったガイドラインがあるようなので……。確かにメーカーによっては、ほぼ同スペックのモデルだけれども、ストレージの種類でウルトラブックと呼ぶ機種とそうでない機種を分けている場合もありますね」
吉田 「ウルトラブックは現時点で海外メーカーが中心でしょ。国内メーカーが参入したがらない理由は?」
石井 「ひとつはそれ以前から、プレミアムモバイルという形で、薄さと軽さにこだわってきたメーカーが多いからでしょうね。ウルトラブックの登場以前から、日本には薄くて1kgを切っている機種が存在したわけです。ただし高付加価値モデルとして、価格も高く設定されていました。つまり、商売上の理由っていうのが大きいのかもしれない。そういう意味ではウルトラブックは対極にあるというか、モバイルなら高くても許されるという幻想を壊しちゃう面がある。もちろん高いマシンにはそれなりの理由があるのだけれど……。
とはいえ薄型でもリーズナブルな価格っていうのはユーザーにとっては絶対に欲しいカテゴリーのはずです。しかもウルトラブックには、ネットブックのようにサイズと価格のために、性能を最小限に抑えないといけないという制約がない。ディスプレーも広くて、OSも機能制限のあるWindows 7 Starterじゃなく、通常のWindows 7です。CPUのクロックは若干低めだけれど、Core i7やi5が選べる。性能面での不満もほとんどないはずです」
性格の異なる2モデルを展開、ウルトラブックはバリエーションの時代に
── ネットブックはパンドラの箱だったけど、ウルトラブックはビジネスにもなるってことなんですよね。これはメーカーにとってもユーザーにとってもメリットになると思うのですが、定期的な買い替えを促進する面もある。
後藤 「確かに。パソコンの買い替えサイクルはどんどん長くなっていて、それこそ20万円クラスのノートパソコンを買ったら最低でも4~5年は使いたいという気分になってしまう。でも10万円程度で買えるなら、お試し感覚でチャレンジできるし、性能に不満が出たら1~2年で買い換えるという選択も取れますね」
吉田 「MacBook Airも初代は使う人を選んだ。価格は高いし、パフォーマンスも不十分だし、買っていたのはマニアが中心です。ビルドが遅くて開発者が困ったなんて話もリアルにあります。やはり安くしたというのはインパクトです。今ではエントリー機種という性格も帯びている。10万円を切る価格になったから、とりあえず買ってみるかと思った人も多いはずです。iPadかMacBook Airかと悩んだ場合、とりあえずAirにしておけば機能的には後悔がないという面もあります」
後藤 「一方でSPECTREのようなプレミアムな価格帯のマシンもあれば、Folioのように6万円程度で買える機種もあったりと選択肢が豊富ですしね」
石井 「ウルトラブックの中でいくつかのブランドを持つ、その先鞭を付けたのがHPという見方もできると思います。価格と実用性を重視したFolioと、デザインを含めた上質感を提供するSPECTREという感じで完全にブランドを分けてますからね」
── Folioに関しては1月の発表以来、価格を2回も下げています。
後藤 「こういうブランド分けは夏以降、各社がやってくると思いますが、性格の異なる製品を同じメーカーが用意するというのは面白いです」
── じゃ、まあ今回はこんな感じで(笑)