ヒップホップの場合は聴く側も参加者なんです
―― ヒップホップのルールチェンジの要素ってなんですか?
長谷川 機材とメディアの進歩はありますね。それも基本的に何が一番安いか、という。生バンドよりサンプラー、サンプラーよりキーボード一体型シンセ、それよりパソコンのほうが安いというように。基本、あまりお金のない人がやってるんで。
―― それによってヒップホップにビートの変化が生まれていると思うんですが、ボカロに限らず日本はコード音楽全盛です。
長谷川 そこがヒップホップとは対局にある部分ですよね。
大和田 日本の音楽はサビの肥大化が激しいですけど、ヒップホップ以降ってサビがなくなっているんですよね。
▲Dixie Flatlineの2年半ぶりの新曲「Soul Breeze」。ワンコード感を演出するため、コードチェンジを意識させないアレンジを施すという逆説的な職人技が見られる。ヒップホップ以降の日本のポップミュージックにおける技術的最先端はボカロで聴ける |
長谷川 いかにワンループでやるかという音楽なので。みんな小室哲哉で育っているんで、どんだけ無茶苦茶な転調をやるか、それもバカラックみたいな理詰めの意外性ではなくて、本当に意味もない転調でサビに行くじゃないですか。
―― 日本人にとってサビが一番気持ちいいところだからなのかも知れませんが、それが国民性かというとそうでもない。録音が残っている日本人最古の歌というのが「オッペケペー節」※なんですけど、あれラップなんですよね。しかも内容が社会批判という。
長谷川 だってあれ語りですもんね、内容も説教だし。
※ 1900年のパリ万博に出かけた川上音二郎一座の歌と演奏をグラモフォンレコードが録音したもの。「甦るオッペケペー」として復刻CDも発売されたが現在は入手困難。
大和田 俳句とか連歌とかもそうだし、お題が与えられて一句づつ詠みましょうみたいな感じ。それがヒップホップだと思えば、日本にもそういう文化は脈々とあるわけですよね。日本にいるとビートに注目するケースが多いですけど、向こうに行くと当たり前ですけどラップを聴いているわけで、やっぱりラッパーが主体なんです。プロデューサーがどうのと言うのは、ちょっと通みたいな。
長谷川 基本、こういう本(「文化系の~」)は絶対出ないですからね。トラックのことばかり言って、ここがこう変わったなんてことは。
大和田 ビートは「お題」なんですよ。俳句とかと一緒で。みんながそれにどう乗るか。それに飽きたら次のビートみたいな。
―― それがルールチェンジなわけですね。
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