2007年に発売されたPCソフト・初音ミク(「PCでヴォーカルのような声が作れる」の意味から、ボーカロイドと呼ばれる)。ニコニコ動画で大ヒットし、「メルト」など再生数が100万回を超えるミリオンヒットが生まれた。
だが、それはもう5年前の話。ニコニコ動画は若者のあいだでも定着し、初音ミクを使うミュージシャン(プロデューサーと呼ばれる)がライブを開けばチケットは即完売。初音ミクはGoogle ChromeのCMにも登場し、日本のネットカルチャーを代表する“顔”となった。
そして今年の3月9日、ファッションブランド「earth music&ecology」(earth)から、新レーベル「earth music & ecology Japan Label」第1弾として、初音ミクとコラボレーションしたカットソーやパーカー、シュシュなどファッショングッズを発売するというリリースがあった。
イラストを担当したのは人気曲「Sweetie×2」などを手がけた“絵師”ちほPさん。先月31日、1日限定で全国191店舗で商品を販売したところ、ルミネエスト新宿・池袋サンシャインシティなどの大型店舗で、主要商品が続々と完売したという。
earthは20~30代の女性に人気のブランド。宮崎あおい出演の「あした、なに着て生きていく?」CMに見覚えのある人もいるはず。そこまでのメジャーブランドがなぜ初音ミクを起用し、何をしようというのだろう。
earth music&ecology Japan Label プロジェクトチーム 鈴木 健太郎氏、秋元 宏樹氏に話を伺うと、ファッション業界、ひいてはもの作りの根幹に関わる背景が見えてきた。
コミケの待機列と同じような
―― 3月31日、開店直後はどんな感じでしたか?
鈴木 ビックリしました。ぼくら新宿ルミネエストにいて、店頭の撮影を終えて、じゃあお客さん来るか待とうかって思ってたら、開始1分とかでお客さんが100人くらい入ってきて。コミケの待機列と同じような状況でした。
秋元 他のお店の人たちも驚いてましたね。「何売ったんですか!?」みたいな。
鈴木 商品そのものはその時点でもう完売してるんですけど。
―― 新宿、池袋では主要商品が即完売だったということですが、他の店舗でも同じように即完だったんですか?
鈴木 いや、苦戦してるところは苦戦しました。六本木とか、銀座とか。
秋元 やっぱり街によってお客さんのステータスがちがうというか。
鈴木 そこは予想していたところだったので、どこどこ店にはまだ余ってますとTwitter上でリアルタイムに告知したりしてましたね。
―― 地方の売り上げはどうでした?
秋元 オタク文化って東京寄りって言われると思うんですけど、ホントその通りになっている感じでした。
―― 東京>大都市圏>地方、という感じでしょうか。
秋元 まさにそんな感じです。九州はオタク文化があんまりないっていうじゃないですか、売り上げもだいたいそんな感じでした。
―― よくここまで大きな展開に踏みきりましたね。
秋元 プロジェクトを進めていたのが、ちょうどChromeのCMが放送された時期だったんです。Chrome、雪まつり※、「Tell Your World」※って感じで。それを見て、しょっぱなからフルスイングでいこう、振っていこう、全店舗でいこうと。
※ 雪まつり : 北海道札幌市でラッピング路面電車「雪ミク電車」が走り、札幌雪まつりでは初音ミクの雪像が登場するなど話題になった。初音ミク発売元のクリプトン・フューチャー・メディアは札幌市にある
※ Tell Your World : 初音ミクを使った曲。Chrome CMソングとして採用され、iTunesでは発売直後に総合ランキング1位を獲得した。作曲はlivetune。
