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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第88回

日本生まれの初音ミク、アメリカ育ちのヒップホップ【前編】

2012年03月14日 12時00分更新

文● 四本淑三

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絶対に時代はこっちだと思ったんですけど……

―― 身体性云々で言えば、初音ミクが登場した時期ってPerfumeのブレイクと重なっていて、僕は面白いなあと思っていたんですが、これはどうですか?

大和田 僕はですね、Perfumeには完全にいかれちゃって。ファンクラブに入ってあらゆるコンサートに行ったんですよ。

Image from Amazon.co.jp
JPN(通常盤)

―― えーっ、そうだったんですか!

大和田 Perfumeはディスティニーズ・チャイルドに対する日本側からの応答だと思ったわけです。つまりエロくて強くてという女性像。でも、それを日本人がどう頑張っても縮小再生産にしかならない。ならば日本側から出せるものは、無機質なロボット的イメージだろうと。Perfumeはその最良のアンサーだと思ったんですけど、初音ミクが出てきたら、もうそれに敵うものはないという。

長谷川 だから時代はこっちだぞと。

大和田 そう、絶対に時代はこっちだと思ったんですけど、行けなかったんですよねぇ。

―― その気持ちはわかります。なんせ無機質どころか実体がないし。

大和田 でも、プロデューサーのキャラ立ちがあって、ファンの間でも「なんとかPっていいよね」みたいな話になっているわけですよね?

長谷川 あれはもう完全にヒップホップですよね。誰が作っているかがすごく重要というところが。

大和田 僕がこれまで学生として接してきた若い世代は、音楽好きならロック好きとヒップホップ好きに完全に分かれるんです。それが今は初音ミクで遊んでいて、ヒップホップも好きという学生もいる。オタクと黒人文化が反発する部分と同時に、その相性の良さみたいなものが錯綜していて、そこはすごく面白い。

―― 本の中でも「アフロアジア」というコラムで触れられていますけど、被支配文化における黒人とオタクの共通性ですよね。ただヒップホップと違って、ボカロにはDISの文化がないんですよ。

長谷川 あー、なるほど。

大和田 それは国民性かも知れないですね。

―― さっきルールチェンジをするのに空気を読む、という話がありましたけど、DISってると思われたらまずいよね、っていう方向で空気読んじゃう。

大和田 向こうは、とにかくDISらないと始まらないよねみたいな、そういうカルチャーなんですよ。本当に憎んでいる場合もあるんでしょうけど。

長谷川 かなりオタク化しているとは言え、もともと不良が始めた音楽なので。

大和田 実際それで抗争が起きて、銃撃で人が死んでいますからね

※ 東海岸で生まれたヒップホップが、独自のスタイルで西海岸でも盛り上がるにつれ、東西間でギャングを巻きこむ抗争に発展した。2Pacが1996年、ノトーリアス・B.I.G.が1997年に銃撃され死亡している。

―― まだボカロPが射殺されたって話、聞いたこと無いですからね。それとプラットフォームがニコニコ動画の一極集中型なので、これがウケるとなると、その方向で均質化していく傾向はあります。

長谷川 じゃあルールチェンジが必要ですよ。そろそろ。

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