
本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。
UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。
実は変更されているiCloudの仕様
iCloudには、他のアップル製品と決定的に異なる点がひとつある。ユーザーに供給するのはあくまで「サービス」であり、その仕様を変更する権限がアップルに残されているということだ。ハードウェアと(パッケージ型の)ソフトウェアは、いったんユーザーの手に渡ってしまえば、メーカー側がその使い方を大幅に制限することは難しいが、iCloudならば可能だ。それは利用規約を見ても明らかだろう。
実際、iCloudのサービス開始から1ヵ月程度しか経過していないが、その仕様の一部はすでに変更されている。まずは、一般公開中の(NDAの制約を受けない)開発者向けドキュメント「Technical Q&A」の1719番、「QA1719:How do I prevent files from being backed up to iCloud and iTunes?」をご覧いただきたい。
QA1719の要点だけかいつまんでいうと、そこには「iOS 5.0.1以降、iCloud/iTunesバックアップから指定したファイルの除外が可能になった」ことが記されている。iOS 5およびiCloudのサービス開始当初は、アプリが扱うファイル/データのすべてがバックアップ対象とされていたが、iOS 5.0.1以降は表1のとおり仕様が変更されたのだ。
ログなどのキャッシュ/一時使用のデータは除外されるようになり、それ以外のオフラインデータについても拡張属性(do not back up属性)を設定した場合には除外できるようになった。
表1:iOS 5.0.1以降のバックアップ対象データ | |||
---|---|---|---|
種別 | 用途 | ディレクトリー | 対象 |
重要なデータ | ユーザーが作成するデータ/ 再作成不可のデータ |
Documents | ◯ |
キャッシュデータ | 再ダウンロード または再作成が可能なデータ |
Library/Caches | × |
一時使用データ | 使用期間の短い一時的なデータで、保存が不要なデータ | tmp | × |
オフラインデータ | ネットワーク非接続時に利用するデータ | Documentsか Library/Private Documents |
◯※ |
※:拡張属性の形でバックアップ非対象が明示されたデータも除外される
この“QA1719”ドキュメントは開発者向けであることから、新仕様が求められるのは今後(iOS 5.0.1以降)リリースされるiOSアプリということになる。言い換えれば、iOS 5.0.1以前にリリースされたアプリは、アップデートしないかぎりアプリの全データがバックアップされるわけだ。

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