486ベースのSC400、
PCI世代のSC520へと続くElan
AMDはこれ続き、1997年後半に「Am486DX4」をベースとした「Elan SC400」と「Elan SC410」を発表する。「SC300の386-33MHzではさすがに遅すぎる」という意見もあったためか、Enhanced Am486DX4-100MHzをCPUコアへそのまま流用したため、性能面では大幅な引き上げとなった。
その分消費電力も上がってしまったのはしかたない。それでも、例えば100MHz動作の場合、動作時でも最大2.2W、平均1.8W、スタンバイ時では最大63mW、平均50mWと相変わらず消費電力は低かった。この数値は3.3V駆動の場合であるが、100MHz駆動をあきらめて66MHz駆動にすると、動作時は最大941mW、平均753mWまで下がった。パッケージはQFPをあきらめて、292ballのBGA(Ball Grid Array)に切り替わったが、1チップですべてが賄える特徴は変わっていない。
Elanシリーズの最終製品は、1999年に発表された「Elan SC520」である。搭載するCPUコアをAm5x86に切り替え、また搭載する周辺回路も時代に見合った新しいものに入れ替えられた。
当時はISAバスからPCIバスへの切り替えが進んでいた時期で、これにあわせてSC520もPCIをサポートする一方で、PCMCIAやISAはサポートされなくなった。もっともPCIの先にISAブリッジを取り付ければ実際は利用可能で、単にニーズが減ったので、そこまでチップに内蔵する必要がないと判断されたという話である。
パッケージは35mm角の388ballのPBGA(Plastic BGA)で、消費電力は133MHz動作時に最大2.0W、平均1.4W。100MHz動作時で最大1.7W、平均1.2Wでしかない。実は組み込み向けプロセッサーの場合、この2W前後というのが非常に大きな閾値で、2W以下の場合は、ヒートシンクなしでも問題なく動作できる。だがこれを超えると、どうしてもヒートシンクを装着しないと熱的に苦しくなる。つまりElanシリーズは、おおむねヒートシンクなしで動作するワンチップのx86プロセッサー、としてラインナップされていたわけだ。
特にElan SC520の場合、PCIやSDRAMをサポートしたことで、マイクロコントローラー用途で非常に使いやすかった。この結果として、例えばKontron社の「DIMM-PC/520I」といった、超小型PCモジュールがSC520ベースで構成できた。あとは適当なベースボードをユーザーが作って、そこにこれを差し込めば一丁上がり、といったことが可能だった。
余談だが、組み込み向けとしては非常に有名なベンダーであるKontronは、一時期このElanや、かつてALiが出荷していた「M6117」という386SXベースのSoCを使って、「DIMM-PC」という製品群を提供していた。これを使うと超小型のx86システムが構築できるので、かなり広く利用されていたものだ。
このDIMM-PCの規格を利用したベースボードは、Kontron以外からも提供されていた。今ではより進化した「COM Express」という規格が広く使われているため、DIMM-PCはKontronを始め、すべてのベンダーから「EOL」(End of Life)扱いで消えてしまった。だが、そもそもDIMM-PCが消えるきっかけとなったのは、Elan自身が生産中止になってしまったためだったりする。
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