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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第65回

CyrixにIBMにRiSE、マイナー系x86ベンダー総ざらえ

2010年08月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/)

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 インテル、AMD、VIA、Transmetaという4大プロセッサーベンダーを紹介したが、実はほかにもx86互換プロセッサーを手がけたベンダーはある。今回はそうしたベンダーの製品を紹介したい。


マイナーなx86ベンダーはたくさんあった

 ただし、今回触れていないベンダーも結構ある。例えば、米Chips&Technologiesは386互換の製品をクリーンルーム方式で製造し、これを「Super386」なんて名前で発売していた。いくつかの命令はインテルの80386よりも高速だったが、同社がインテルに買収されたため、これらの製品はいずれも廃番になって終わった。

 またファウンダリー(半導体製造事業者)の台湾UMCは、Intel 486のマイクロコードをそのままデッドコピーしたものを「UMC U5S」(80486SX相当)や「UMC U5SD」(80486DX相当)などという型番で1994年に発売していた。言うまでもなくこれは違法であり、すぐにインテルに訴えられて、結果米国内での発売が差し止められる始末となる。その後LVやDX2などの製品も計画されるものの、これを搭載した製品を販売したメーカーまで訴えられるとあっては利用するPCメーカーもおらず、UMCもこの路線を諦めている。

 ほかにも、旧SGSトムソンがCyrixの「Cx5x86/6x86」の生産委託を受けた関係で、やはり自社ブランドで5x86/6x86を生産していた。この時は何か改良を加えるといったことはしておらず、単に名前が違うだけであった(SGSトムソンが欧STマイクロエレクトロニクスに変わってからについては後述)。

 また、台湾ALiも「M6117」シリーズという80386互換コアを独自に製造していたが、これを使ったSoCは(いろいろあったものの)うまくいかず、最終的に台湾DM&P Electronicsにコアの権利を売却、同社はCPUビジネスから撤退している。

 こうした動きとは別に、台湾RDCは独自に80186互換のRISCプロセッサーを開発。「RDC1100」シリーズをへて「RDC8800」シリーズとして、特にネットワーク機器向けに供給していた。今ではこの路線を発展させて、80486互換となる「R8600」シリーズを現在は販売している。

 もっとも、性能は133MHz駆動で46MIPS(66MHz駆動の80486は54MIPS)だから、インターネット端末にも使えるレベルではなく、あくまでもネットワーク機器など組み込み向けオンリーである。

 これら以外にも、独自にx86互換を手がけたCPUベンダーはいくつかある。国内でもVM Technologyが80286や一部80386と互換のプロセッサーを製造していた。だが、どれも長続きせずに終わっている。「80287」や「80387」などのFPUの互換品を手がけたベンダーとなるとさらに多く、AMD/Cyrix/IIT/Chips&Technologies/ULSI/Weitek/RiSE/Symphony Laboratorisあたりが製品を出していた。こうしたものを全部拾うのは切りがないので、FPUについてはとりあえず除外して、CPUに限って主要なベンダーを挙げてみた。


IBMのx86互換プロセッサー

IBMのx86互換CPUロードマップ

Cyrix製品以前のIBMのx86互換CPUロードマップ

 まずは米IBMから話をしよう。同社はインテルとクロスライセンス契約を結んでいる関係で、インテルの80386SXのマイクロコードを合法的に入手できた。そこで、これを改良した「IBM386SLC」を1991年10月にリリースする。

 続いて、パッケージやバスは386と互換ながら、キャッシュ改良などで性能を上げた「IBM486DLC/SLC」を1992年に、さらに2倍速駆動となる「IBM486DLC2/SLC2」を1993年末にリリースする。ただし、これらは486という名前をつけているものの、内部はあくまで386互換である。

 そこで同じ1993年に、今度はIntel 486のマイクロコードをベースに、独自の改良を加えた「Blue Lightning」シリーズを、「IBM486BLX」としてリリースする。さらには、内部を2倍速化した「IBM486BLX2や、3倍速で100MHz動作に達した「IBM486BLX3」などを、矢継ぎ早に繰り出した。これらはその性能の高さもあり、結構広く使われることになった。

 ところが、インテルの製品をベースにしたのはこれが最後で、これ以後IBMはCyrixの製品をベースにすることになる。これは、Cyrixが「Cx5x86」以降の生産を、SGSトムソンとIBMに委託したことに関係している。どうもCyrixは生産委託の費用を下げるために、これらのCPUを委託ベンダー自身のブランドで発売することを認めたようで、この結果として、CyrixのCx5x86の登場と同時に、IBMからも「IBM5x86」が登場する。

 その後は「IBM6x86」「IBM6x86L」「IBM6x86MX」と、ほぼCyrixと共同歩調をとって製品が投入されることになる。基本的にはCyrix製品とまったく同じだが、6x86LはCyrix(というかSGSトムソン)が0.5μmプロセスで製造したのに対して、IBMは先行して0.41μmプロセスを使い(一部資料では0.35μmとされているが、この時期はまだ0.35μmの量産は困難だったと思われる)、Cyrix製品よりもさらに消費電力が低い6x86Lを投入する、なんて差別化をしていたこともあった。

 もっともこうした関係は、CyrixがVIA Technologiesに買収されるまでの話(関連記事)。Cyrix買収後のIBMは、x86製品を自社ブランドでは販売していない。

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